第2章 喫茶ポアロにて
ちょうどそこへ、アイスコーヒーを淹れ終えた梓がホールへ出てきた。
心なしか青ざめた顔の柊羽を見て声をかけようとしたが、安室の方が1歩早かった。
「はじめまして。先週からこ…」
「えっ…?」
自己紹介をしようとした安室の言葉は、それを伝えたかった相手によって遮られた。
柊羽は先程までの怯えた表情とは打って変わって、涙を堪えた名残があるままの潤んだ瞳を大きく開き、驚いたような表情で安室を見つめていた。
予想外の反応に安室も自己紹介の続きを忘れ、吸い込まれるように彼女の瞳に釘付けになっていた。
今思えばこれが、始まりだったのかもしれない。
2人にとっては永く感じられていたがその一瞬の沈黙を破ったのは男の方で
「えっと、僕の顔に何かついてます?」
「へっ!?あっ、ご、ごめんなさい!!!」
安室の質問ではっと我に返ると、再び目線を外してしまう柊羽
なんとか取り繕わなければ。そう思い必死に感情を押し殺した。
「いやー、カッコよくて。こんな整った顔見たことないからビックリしちゃいましたよ」
あはは~と誤魔化せば、梓が「うそ!柊羽さんが!」とどこか悔しそうな顔で安室に視線を送っていた。
そしてそんな2人のやり取りが見ていられず「はい!アイスコーヒーです!ホットサンドもうすぐできるので安室さんはそっちお願いします!」と間に割って入った。
安室は特にそれを断る理由もなく、厨房へ向かう。
「柊羽さん!ほんとですかさっきの!」
「え、えっとー…確かにかっこいいとは思うけど別に見惚れていたわけでは…」
つい出た言葉は、いやいやそしたらなんて言い訳すれば…と余計頭を悩ませてしまった。
カランカラン____
気付けばお昼時になり、ポアロにはお腹を空かせたお客さんが来店し始めた。必然的に梓は柊羽の元を離れざるを得ず、柊羽は助かった、とアイスコーヒーに手を伸ばした。
そんな一部始終を見ていたコナン。
(おいおいマジかよ、俺に全然気づいてねーじゃねぇか。わざとか?ったく…)