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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第10章 ミステリートレイン


その日安室は、ある場所に向かっていた。



先日の電話では極力冷静を装ったつもりだったが、大丈夫だっただろうか。
まさか、彼女が萩原とも繋がっていたとは。
それも聞いた話から察するに、旧友たちはよほど柊羽に入れ込んでいたと見える。


(何の因果か…)


フッ。

けれど本当に、萩原の最期を知ることが出来たのは自分にとって大きな収穫だった。
公安、それもゼロという立場上、知人との繋がりは一切絶った。
自分が守るべきもののためそうしたことだが、やはり彼らのことは常に気になっていた。
6ヶ月という短い間だったが切磋琢磨した戦友たち。
彼らの訃報を関係者伝いに知る度に、やるせない思いが募っていくばかりで。
その度に決意が揺らぎそうになった。
果たして自分がしていることは正しいのか?
彼らだって、"守りたいもの"だった。
そしていつの間にか、1人だった。






そんな中出会った、柊羽という人物。
あんな話を聞いてしまっては、もう他人事では済ませない。
それはきっと、友人達の無念を晴らしたいという正義感から来るものだ____とりあえず今は、そういう事にしておこう。




大事なものを作ると、足元を救われる。
今自分がいるのはそれほど危険な場所だ。




けれど、柊羽を通して今は亡き友人たちと繋がれたような気がして、心の靄が晴れたのも事実。
自分は1人ではない。皆、見ていてくれる。なぜかそんな気持ちになって、今日は彼らの墓参りをしていたのだ。




(松田、萩原、ヒロは終わって…あとは…)




最後の一人の訃報は、まだ記憶に新しい。
ここ1年は特に目まぐるしく、ここに来るのは初めてだ。




「来るのが遅くなってすまないな。俺はまだそっちに逝けそうにない。アイツらのこと、頼んだぞ。」




『当たり前だ。こっちにお前の席はねぇよ!』




ヒュゥッと、風が吹いた。

目を瞑り、天を仰ぐ。

胸のつかえが取れたような、清々しい気分だ。



そんな気持ちに浸っていると、こちらに近付く気配を感じさっと物陰に隠れる。



(もう、これがなくても大丈夫だな。静かに、瞑れ…友よ___)




どこか、御守りのように大事に残しておいた、返せなかったメールを削除した。

もっと深いところで繋がっている。

そう思うことができたから。
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