第9章 リンクする思い出
小五郎の話によると、今回の依頼は先日亡くした兄の遺品から見つかったコインロッカーの鍵のことを調査して欲しいということらしい。相場が全く分からない柊羽だったが、依頼料として30万、という点に安室が引っかかっていたところを見ると美味しすぎる話らしい。
だが、当の依頼人は約束の時間になっても現れない。
どうしたものかと小五郎が携帯を見ると、依頼してきたアドレスと先程場所の変更の連絡が来たアドレスが違うとのこと。何かの行き違いがあったのかもしれないと、一同は一旦探偵事務所に戻ることにした。
が、探偵事務所にも人影はない。
面倒くさいと思いっきり顔に書かれている小五郎がトイレに入ろうとすると、携帯が震えた。どうやら依頼人らしい。
「たった今コロンボに着いたから来てください、って…」
「あらら、すれ違っちゃったんですね」
「だったら早く行かなきゃ!」
「あ、あぁ…」
本当は少し投げ出したかった小五郎だが、女子二人の声に渋々従った。
「ちょっと待ってて!僕もトイレ!」
と、コナンが駆け込もうとすると再び携帯が鳴る。
「急いでみんな来てくれ、って」
「みんなってわたし達も?」
「私はポアロに戻って仕事しようかなぁ…」
「まぁまぁ、皆でコロンボに行きましょう!」
「みんなでって言ってることだし!」
柊羽たちの声は無視して、安室とコナンは不自然な演技で全員を部屋の外に連れ出した。
「なんなの?透さんもコナンくんも…」
「恐らく、こういうことですよ…」
柊羽が疑問の声をあげると、安室が推理ショーを始めた。
誰かが自分たちをここから追い出そうとしている。入口にはピッキングの跡があり、事務所のティーカップも使っていた形跡がある。
自然とコナンがその推理ショーに加わり、補足説明をし始めた。
柊羽にはその光景が少し微笑ましかった。
(なんか2人、息ピッタリで面白い)
小五郎と蘭はそこに引っ掛かりはしなかったようで、何故そんなことする必要があるのかということを気にしていた。
「さぁ、それは本人に直に聞いてみましょうか!」
「え、本人って…」
「恐らくその誰かは何らかの理由で依頼人を連れ込み、まだ隠れているんですよ…あのトイレの中にね」
そう言った安室の顔は、とても生き生きとしているように見えた。