第7章 偽装工作
間もなく柊羽はポアロに着いた。
カランカラン_____
「いらっしゃ…あ、柊羽さん!」
「梓ちゃん、えーと…ただいま?」
「どうかしたんですか?」
「忘れ物をされていたので、僕が連絡したんです。それより、お一人ですか?」
「はい、そうですけど…」
「ちょっと柊羽さん!いくら犯人捕まったからって危機感持ってくださいよ!」
「梓さんの言う通りです。僕はてっきりコナンくんが一緒なのかと思って…」
と、安室は困り顔で額に手を当てて嘆いた。
「ご、ごめんなさい…」
本気で心配してくれている彼らに、無事だったんだからいいじゃないかとは、とても言えない柊羽であった。
「帰りは僕が送っていきます。」
「え、いや、」
「何を遠慮しているんです?"彼氏"なんだから、当たり前でしょう?」
「安室さん、よろしくお願いします!お疲れ様でした!」
「お疲れ様です。車まわしてくるので、ここで待っていてくださいね」
選択肢を与えてくれない2人のやり取りに、柊羽は黙って従うしかなかった。
「安室さんと…って最初はビックリしましたけど、よく見たらお似合いだし、安室さん柊羽さんのこと大好きだし、安心しましたよ~」
「え、そうかな…?」
(ていうかその設定、まだやるの?)
「柊羽さんも安室さんといる時は乙女ですもんね!」
「え…」
その指摘は、意外だった。
「ふふっ、なんだか私も嬉しいです!」
「は、はは…」
柊羽は笑って誤魔化した。
そこへ、ブロロロロロ…と心地よい、しかしこの場にはそぐわないエンジン音が聞こえ、白いスポーツカーがポアロの前に停車した。
「あ!来ましたよ!」
「え、えぇ!?あの車!?」
ほら!と梓に背中を押され外に出ると、安室は一旦車を降りて助手席のドアを開けてくれた。
「どうぞ」
「お、お邪魔します…」
少し気が引けたが、柊羽は話したいこともあったので今日のところは観念して大人しく従うことにした。