第7章 偽装工作
「大丈夫なのか?安室さんの家にいたって言ってたけど…」
言いたいことを言ってスッキリしたのか、コナンからはもう怒りは感じられず、心から心配してくれていることが分かり柊羽は安堵した。
「うん、平気。最初はびっくりしたけどね。意識がなくなった私を運んでくれたみたいで。気づいたらもう夜で危ないから家にいてって。…自分でも戸惑ってる。前に進めてるのか、彼だから平気なのか分かんなくて。」
「ほんとは付き合ってないんだろ?」
「ないない!よく分かんないけど話合わせてって。」
「…あの写真は?」
「あ、あれは!過呼吸を…」
「はぁ…なるほどな」
コナンは色々と辻褄があい、納得してくれたようだった。
「でも、一応警戒してくれよ?安室さんは頭が切れるし、まだおっちゃんに弟子入りした目的が分からねぇ。柊羽姉に危害を加えるつもりはなさそうに見えっけど…念の為な。」
「うん、ありがとね。って、ここ…」
話の内容にすっかり気を取られ、周りの景色が見えていなかったが、いつの間にか見覚えのある場所にたどり着いていたようで。
「オメーに渡しておきたいもんがある。あと博士も久々に会いたいってさ。」
そこはしばらくぶりの阿笠邸だった。
コナンに先導され家の中に足を踏み入れる。
久しぶりといってもまぁ、たしか1ヶ月ぶり程度だがすぐに会えるような距離にいるにしては時間が空いたといってもいい。
「おぉ~柊羽くん!元気じゃったかのぉ?」
「博士!元気だよ。博士も変わりない?」
「順調に増量中ね。」
柊羽の問いに間髪入れず答えたのは、問われた本人ではなかった。
「ふふっ、相変わらずの敏腕マネージャーっぷりだね。哀ちゃんも久しぶり!」
「そうね。それより、説教は終わったの?」
「あ、はは~…」
新一め。あんまり色んな人に言わなくたって…という思いでジト目で見てみるが、同じような目で睨み返された。
とはいえ、柊羽はこの少女__灰原哀には、隠し事は出来ないだろうと自負している。小学一年生にしては大人びすぎているこの少女にはきっと何か事情があるのだろうが、まだそこに踏み込むまでの勇気はなく何も触れずにいる。