第7章 偽装工作
一同は梓の厚意を有難く受け止め、昼を済ませた。
勿論、安室はひとり特別メニューで。
「じゃあ私、午後は園子と約束があるのでこれで。梓さん、私までご馳走になっちゃってすみません。昨日安室さんからうちには来れないって連絡があって心配でしたけど、ほんと無事でよかったです!事件なんてなくても、またいつでも泊まりに来てくださいね!」
「蘭ちゃん、ありがとう。またね!」
「では僕達もそろそろお店開けましょうか」
「ですね!午後で売り上げ取り戻さないと!頼みますよ安室さん!」
「えと、じゃあ私は帰…」
みんなに便乗して、そそくさと帰ろうとした柊羽だったが、腕を捕まれそれは叶わなかった。
「柊羽姉ちゃん、僕行きたいところがあるんだ。一緒に行ってくれる?」
コナンは笑顔だったが、柊羽には悪魔の笑みにしか見えなかった。
「う、うん!じゃあ一緒に行こうか。」
「柊羽さん、お弁当とっても美味しかったです。また、楽しみにしていますね!」
「そ、それは良かったです!本当に、今回の件はありがとうございました。梓ちゃん、ご馳走様!」
「僕は当たり前のことをしたまでです」
「私もです!これからは隠し事やめてくださいね?」
「善処します。じゃあ、また。」
と、重い足取りで柊羽はポアロを出た。
前を歩く小さな背中からは、不機嫌オーラがだだ漏れだ。
怖いのは確かだが、これは不器用な彼なりの心配の仕方だということは分かっていた。
「ごめんね?」
「謝るようなことしたのかよ?」
恐る恐る声をかければ、コナンはこちらを振り返ることはせずに応えた。
「心配、かけたかなって」
すると、歩みを止めて、振り返る。その表情はなんとも表現し難いもので。
「心配なんてもんじゃねぇ」
「…っ!…ごめん」
「昨日、尾行された恐怖で意識がなくなったって安室さんから連絡あったっきりで、今朝ポアロで来るの待ってたらあんな写真があって?当の本人はピンピンして現れて…」
「う…」
痛いところを、チクチクとつつかれているようで居心地が悪い。
でも、言い返せないのは、明らかに非があるのは自分だと分かっているからで。