第7章 偽装工作
「なんか…ほんと、なんですね…」
「ですよね!私もそう思います…」
抽象的な会話で意思疎通している梓と蘭に、他の3人は頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「悔しいけど、お似合いです!柊羽さん、おめでとうございます!」
「柊羽さんの言葉、感動しました!安室さん、柊羽さんのことよろしくお願いします!」
「あ、え、あの…」
「ふふっ、僕もさっきの柊羽さんの言葉には胸を打たれました。普段はなかなか素直になってくれませんので。」
柊羽は冷静になって振り返り結構大胆なことを言ってしまった…と青ざめたり顔を赤らめたりと忙しい。
その時、ちょうどパトカーが到着し全員の意識はそちらへ向かったので柊羽はとりあえずホッとした。
犯人の身柄を警察に引渡し、ストーカー事件は一件落着。
「もうお昼ですね。ポアロは午後から開けるとして…皆さんお腹すいてますよね?ご飯にしましょう!柊羽さんのためにご馳走しちゃいますよ!」
と、張り切る梓。
気遣いは嬉しかったが、柊羽ははたとある事に気づき、また内心焦っていた。
「あ、僕は結構ですよ。皆さんで食べてください!」
「え、なんで?制限中ですか?」
「これがありますから」
(あ、安室さん~!)
と、柊羽の心配をよそに嬉しそうにお弁当を広げる安室であった。
「そ、それって…」
「まさか…」
「あ!私梓ちゃんのカラスミパスタが食べたいな~!!」
「ふふっ、愛妻弁当です」
なんとか注意を逸らそうとした柊羽だったか、その努力も虚しくあっさりバラされてしまった。
女子二人は予想通りきゃーきゃーと手を握り合い騒いでいる。
「わぁ~!この卵焼き美味しそう!」
「コナンくん…心苦しいけど、これは初めて作ってもらったお弁当だからね。また今度あげるよ。」
「ちぇー。」
と言いながら振り返ったその顔には、「ちゃんと説明しろ」と書いてあるようだ。
また今度があるのか、とこの先のことを思いやると自然とため息が出たが、不思議と嫌ではなかった。