第6章 明らかになる過去
翌朝目が覚めると、昨日の話の通り安室の姿はなかった。
うーんと背伸びをして起き上がりリビングに行くと、そこには朝食が用意されていた。
「まじか…しかも和食って。ほんと何者?」
もうとにかく凄すぎて、柊羽は笑うしかなかった。
ご飯は安定の美味しさでぺろりと食べてしまった。
(ていうか、いつ探偵業なんてやってるんだろうって思ってたけどまさかこんな働き方してたなんて…なんか、ほんと申し訳ないなぁ。何か私にもできること…)
『今度作ってくれますか?』
ふと、昨日の言葉を思い出した。
(言葉のあやというか本気じゃないだろうけど…気持ちが大事だよね!)
と、自分自身に言い聞かせ、今日のお弁当を作ることにした柊羽は食材を確認してメニューを考える。
「いや、セロリありすぎでしょ」
意外な安室の好みに思わず笑みが零れた。
誰かのためにご飯を作るなんて久しぶりで少し緊張したが、なんとかそれなりにできた。そしてちょうどその頃家主が戻ってきた。
「ただいま戻りま…あれ?柊羽さん?」
「あ、お借りしてまーす」
キッチンに立っているとは思わなかったのか、安室が不思議そうに近づいてくる。
「朝から大変ですね、お疲れ様です」
「ありがとうございます。これは?」
「お弁当です。やっぱり何かしたくて…」
「気にしなくていいって言ったのに…でも、嬉しいです」
「あ。味はフツーですからね!」
「美味しそうですよ?それに料理の一番の隠し味は、愛情ですから」
「なっ…!もう!すぐそうやって!!」
「ふふっ、怒った顔も可愛らしいですね」
「はぁ…」
安室はどこか上機嫌で、いつもより饒舌なようだ。これは何を言ってもダメだ、と柊羽は反論を諦めた。
「あ、もうこんな時間ですね。準備は出来てますか?」
「大丈夫です!」
「じゃあ、行きましょうか。」
「ですね。お邪魔しました。」
柊羽はぺこっとお辞儀をした。
安室はその手にしっかりとお弁当を握りしめ、2人は家をあとにした。