第6章 明らかになる過去
落ち着きを取り戻し、少し恥ずかしくなってどうしようと柊羽が思考を巡らせていると
「あ、そうだ。明日ですが、僕は早朝に1件仕事があるので一旦出かけますが、9時頃には戻りますからその後一緒に出ましょうか」
「探偵のお仕事ですか?」
「えぇまあ、そんなところです。」
はぐらかされたような気がしたが、柊羽は特に追求はしなかった。
「すみません、私がいなかったらポアロまで少し休めたのに…」
「柊羽さん、僕は自分の意思で貴方をここに連れてきたんですから、また次そのことで謝ったら…そうだな、お仕置きしますよ?」
「う、はい、分かりました」
忙しい安室を気遣ったつもりが、思わぬ地雷を踏んでしまったようで。
「9時くらいまでに出かける準備をしておいて下さいね。家のものは自由に使って構いませんから。」
「ほんと…ありがとうございます」
思わず謝罪の言葉が出そうになったのをすんでで堪え、感謝を述べると安室は満足そうに笑っていた。
「じゃあ今日はそろそろ休みますか」
安室は手際よく二人分のカップを片付ける。
柊羽はその背中にそっと近づき、シャツの裾をきゅっと握った。
「…柊羽さん?」
「そのまま、聞いてください。」
安室は水を止め、カップを置いた。
「今日は本当に、ありがとうございました。甘えていいって言ってくれたのも、ビックリしたけど嬉しくて、でももう、結構甘えちゃってるよなとか思ったり…よ、よく分かんないですけど…とにかく、ほんとにほんとに感謝してます…えっと…お、おやすみなさい!」
柊羽は段々自分の言動が恥ずかしくなり、逃げ出すように布団に潜った。
呆気にとられ1人残された安室は、少し間を置き、ふっと笑った。
正直、家に連れてきたのは不可抗力で事故だったとは言え、彼女にとってはあまり良くない選択だったかもしれないと、少し気になっていたが、彼女の言葉でそれは杞憂だったと分かってホッとしていた。