第6章 明らかになる過去
(いやいや、何和やかに過ごしてるの私…それもこれも全部安室さんの大きすぎる器のせいだ…ていうか、ホントにいいのかな?男の人苦手とか言っておきながら彼氏でもない人の家に泊まるってどうなの?)
今の自分の立場を考えると自己嫌悪に陥りそうで、柊羽ははぁ…とため息をついた。
「今度は何を考えてるんです?」
「う、わ!?っと、危ない…」
突然横から聞こえた声に驚き手を滑らせそうになった。
「お仕事戻ったんじゃ…」
「コーヒーを飲もうと思いまして。柊羽さんも飲みます?」
「あ、いただきます」
そう言うと安室はニコッと笑った。
(…はっ!まただ!)
「それで、なんのため息ですか?」
「なんかすぐ安室さんのペースに持ってかれちゃうなぁって」
「?」
「流されて、甘えそうになります」
困ったように笑う柊羽。
「柊羽さんは、誰かに甘えるのが怖いですか?」
コーヒーをドリップしながら投げかけられたその質問は、痛いほど心に突き刺さった。
図星、だ。
柊羽は見透かされていることが悔しくて、恥ずかしくて、思わず俯いてしまう。
「自惚れじゃなければ、僕には多少なりとも心を許してくれているようですし、甘えてくれていいですよ。」
「いや、それは…」
「何も恋人同士がするようなものじゃなくても、思ったことを遠慮しないで言うとか、甘えにも色々ありますから。少しずつ試してみたらどうですか?リハビリだと思って」
____『気にすんな!リハビリだと思ってさ。俺はお前の本音が聞きたいんだ』
それは、あの人がくれた言葉に似すぎていて。
逃げていても、強がっていても、本当は誰かに甘えたかったのかもしれない。
柊羽は張り詰めていたものが弾けたかのように、ポロポロと涙を流した。
安室は何も言わず、そっと手を握り髪を撫でた。
また少し、2人の距離が縮まった瞬間だった。