第6章 明らかになる過去
「お詫びと言ってはなんですが…ご飯、食べますか?」
「えっ!作ってくれたんですか?」
「ついでと言うと聞こえが悪いですが、一人分も二人分も変わりませんから。」
「うわぁ、美味しそう!安室さんの料理独り占めなんて贅沢すぎますね!」
「喜んでもらえて良かった。どうぞ、こちらに座ってください。」
安室は柊羽をダイニングテーブルに促し、食事を振舞った。
普通に会話できたことに安堵しながら、本題をなげかける。
「今日は遅いですし、ちゃんと離れて寝ますので良かったらこのままうちにいてください。」
「えぇっ?でも…」
「夜道は危ないですよ。どうしても帰るというなら送りますが…このままいてくれた方が僕の休む時間も増えるんですよね…」
「そんなの…ズルいです」
「褒め言葉として受け取っておきます」
あんな風に言われたら、選択肢などあってないようなものだ…と、柊羽は口を尖らせたまま「いただきます」と呟いた。安室はいつもの笑顔で「召し上がれ」と返す。
そして柊羽は食事を摂り、安室はパソコンを立ち上げ事務仕事を始めた。
「美味しい。お店みたい…」
「それは嬉しいです。柊羽さんも料理されるんですよね?」
「まぁ、普通に。でもホントにホントに普通ですよ。」
「今度作ってくれますか?」
「え…」
「ふふっ」
また、この人は…一体何を考えているんだか。
そう思って当人を見つめてみるが、どこ吹く風でパソコンを弄っている。
その後もとりとめのない話をたまにしながら、柊羽は食事を終えた。
「ご馳走様でした。」
下膳をしようとすると、安室が気付きやってきた。
「僕がやりますから、客人は座っていてください。」
「これくらいやらせてください。じゃないと落ち着きません!安室さんも忙しいんですから、お仕事やっててください」
「柊羽さんは時々頑固ですよね」
「それは安室さんもです」
「ははっ、分かりました。じゃあお願いします。洗ったらそこに被せておいてください」
「はーい」
そして洗い物に取り掛かると、柊羽ははっと我に返った。