第5章 二人の探偵
そして信号待ちをしている時だった。
「そうだ、柊羽さんさえ良ければ連絡先交換しませんか?勿論無理にとは言いませんが、いざと言う時の連絡先は多い方がいいかなと思いまして」
「確かに…でも、女子高生という敵が増えそうです」
「それは…やめておきますか?」
「ふふっ、冗談です!安室さんがいいなら、お願いします。」
「良かった。あ、青ですね。渡ってからにしましょう。」
柊羽は、初めて安室をからかうことに成功した!と全く関係ない所で喜んでいた。
そして道路を渡りきり、連絡先を交換した。
「男の人を新しく登録したのなんて何年ぶりだろ」
「なんだか特別な感じがしますね」
「それ安室さんが言います?」
2人は笑い合い、再び歩き出した。
「あと5分くらいです」
「思ってたより遠いですね…ついてきて正解でした」
「そうですか?さすがにこんな明るい時に何もしないんじゃ…」
ふと安室の顔を見ると、一瞬目付きが変わったのを柊羽は見逃さなかった。
「…安室さん?」
「誰か、ついてきていますね」
「え…」
思いもよらない言葉に、身が強ばる。
「振り向かないで。少し走れますか?撒きますよ」
安室は少し躊躇したが、緊急事態だったので柊羽の手を取り走り出した。
「あ、ちょ、安室さん!」
「すみません、少し我慢してくださいね」
勿論安室の方が速いので、柊羽は引っ張られるような形になった。
その時、また別の恐怖が柊羽を襲ってきた。
『ねぇ、ちょっと、どこ行くの?』
『いいから、ついてこい』
『手、痛いよっ』
『うるさい、黙れ』
『んぅ…っ』
有無を言わさず引かれる手。愛情など感じられなかったキス。
「っぁ、むろ、さん…っ!やっ、やだ…!」
「柊羽さんっ?」
か細い声だったが、安室は異変に気付き足を止め振り返った。
柊羽は無意識に手を払ってしまう。
「怖いっ…行きたくない、やぁっ!」
「柊羽さん、驚かせてすみません。深呼吸、しましょう」
「ひっ…は、っぅ、はぁっ…はぁっ」
過呼吸になり、うまく息ができていない。余程苦しいのか、地面に蹲ってしまった。
「柊羽さん、しっかり」