第5章 二人の探偵
「………ストーカー、でしょうね。」
「っ!!」
安室は気をつかってか遠慮がちにそれを告げた。
分かっていたはずなのに、動揺が隠しきれない柊羽。
自分に伸びてくる男の手がフラッシュバックする。
ドクン、と心臓が跳ねて、段々と呼吸が乱れるのが分かる。
「っぅ、…っは、ぁ…!」
「柊羽姉!!!!」
前のめりで、頭を抱えるように苦しみ出した柊羽にいち早くコナンが反応した。
椅子の横に歩み寄り、手を握る。
「しっかり!!大丈夫、僕達が守るから。ね?」
「はっ、はぁ…っ」
「コナンくんの言う通りです。僕達に任せてください。」
安室も、柊羽に触れこそしなかったが傍に跪き目線を合わせ、安心させるように話しかけた。
「僕に合わせて深呼吸できますか?いきますよ…」
安室は柊羽に聞こえるよう大袈裟にスゥー、ハァーと深呼吸をして見せた。
少しずつ周りを見る余裕が出てきた柊羽は、必死に安室の呼吸を追いかけた。
「上手ですよ、そのまま続けてください。」
柊羽は素直に安室に従っている。
自然と強く握ってしまっていたコナンの手を心の中で労る余裕もでてきた。
「うん、もう大丈夫ですね。心配いりませんよ。」
______『もう大丈夫だ、心配しなくていい』
またあの声が助けてくれた。
他人の空似だろうが、安室の声が心地よいことに変わりはないなと柊羽はぼやっとしながら考えていた。