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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第16章 純黒の悪夢


安室の言う通りに柊羽は観覧車の外へ抜け出した。
来場者の安全確保という使命は理解しつつも、やはり先程の会話が忘れられない。

(まさか陣平さんと透さんが…)

そんな奇跡じみた巡り合わせがあるのだろうか。
それとも、

(陣平さんが、引き合わせてくれたのかな)

そう考える方が、何故だかしっくり来た。





『ったくどこで何やってんだか、あのパツキン大先生はよぉ』

『ぱ、パツキン…?』

『あぁ、ほらあれだよ、‘’ゼロさん‘’。もー陣平ちゃん、明日非番だからって飲みすぎ!』



『萩原のやつ、フザケやがって…アイツらに何て言やぁいいんだよ、ったく』

『同期の方々は葬儀に呼ばないんですか?』

『1人は来たがな。あとの2人は来れねぇってのはなんとなく分かってた』



『やだっ、行かないで!!』

『やっとお前のワガママが聞けたな』

『じゃあ…!』

『…お前なら大丈夫だ。あそうだ…もし、奇跡でも起きてアイツらに会うことがあったら、よろしく伝えてくれ。』

『そんな、もう最期みたいな…解体して、戻ってきてよ!』



『ゼロ…昔安室さんがそう呼ばれてたらしい。柊羽姉ちゃん何か知らない?』








(…!!!ゼロ、そっか…そっか…!!!)







溢れ出す思い出で点と点がつながっていき、柊羽は走りながら涙を止めることが出来なかった。

するとある声がそんな柊羽の意識を現実へと引き戻し、慌てて涙を拭う。




「…ぁー!ママぁー!!!!」




小さな子供の声だ。恐らくこの騒ぎで母親とはぐれてしまったのだろう。
柊羽は耳を凝らし、声の出処を探った。

(見つけた!)

その声の主は、屋外の飲食スペースに置いてあるテーブルの下で丸くなり、必死で母親を呼んでいた。



「ボク!」

「おねぇちゃ…ひぐっ」

「もう大丈夫、心配いらないよ」
__『もう大丈夫だ、心配ない』



いつも自分が助けられていた台詞で、今度は自分が誰かを助けるなんて。
同じ空間にいなくても背中を押してくれるスーパーヒーローのような存在に、思わずこの場にそぐわぬ笑みが漏れた。



「お姉ちゃん?」

「ふふっ、ごめん、おかしいよね。さ、ママのところに行こう?」



柊羽は少年の手を引いて走り出した。
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