第16章 純黒の悪夢
はぁ、はぁ、はぁ、、、_____
息が切れることも厭わず、柊羽は走り続けていた。
自分が駆けつけたところでできることなど何も無いのは分かっているが。
今置かれている大切な人たちの状況を知った上でただ待っていることなどできなかった。
ガチャリ。
なるべく音を立てないように気をつけたつもりだがやけにその音は大きく聞こえるようだった。
バクバクと、走って上がった心拍数だけではない緊張からのそれも加わり、額にはたらりと汗が垂れた。
(なんとか、侵入はできた…)
従業員の目を盗み目的地の内部へとたどり着いた柊羽。
(ふたりはどこに…っ!)
吹き抜けのような暗い内部を探るように目を動かしていると、ドォン!と聞いた事のないような爆音が響き、視界がぐらりと揺れた。
「っなに!?」
咄嗟に身を屈めて当たりを見渡すが、その音の原因は分からない。
ただ「時間が無い」ということだけはハッキリと分かった。
柊羽はじっとしていても仕方がないと、再びあてもなく駆け出した。
*
その頃安室は、なんとかギリギリのところで爆弾の解除に成功したところだった。
「今のは…爆弾の解除に気付かれたか」
流石に組織の奴らも馬鹿ではない。
直接外から攻撃を仕掛けてきたということだろうと推測できる。
「チッ、まずいな、車軸にはまだ爆弾が…」
そう呟き、足下に投げ出されたライフルバックを手に走り出した。
とにかく手当たり次第に張り巡らされた爆弾を回収していく。
しばらくそうしていると、タタタっとどこからか足音が聞こえてきて安室は咄嗟に物陰に隠れた。
(何者だ?気配を消していないということは敵ではない可能性が高いが…)
じぃーと音のする先を見つめる。
(くそっ、一刻を争うというのに…!)
まだ爆弾は大量に残っているのだ。
1秒も無駄にしたくない。そんな思いから少しずつ焦りが生まれる。
そして遂に音の主が姿を現した。
そこにいたのは…
「柊羽!?」
「と、るさ…はぁっ、はぁ…」
予想だにしない人物であった。