第16章 純黒の悪夢
安室と気を失ったままの柊羽は東都水族館に到着し、まずは医務室へ向かい適当な理由をつけて安室は一人そこを後にした。
(すまない。すぐに終わらせるから…)
間もなく公安の仲間がキュラソーを連れて観覧車に乗る手筈になっている。
観覧車の整備スタッフのコスチュームを身に纏い、難なく観覧車内部へと侵入することができた。
(まずはアイツを止めないとな)
そう思い、向かったのは観覧車の頂上。
「無事に逃げられたようだな」
相手は自分を見るなり、そう発した。
「やはり貴方でしたか…聞かせて貰えますか?あんな危険を冒してまで我々を助けた了見を」
「一般人が巻き込まれていたからな。彼女は無事か?」
「…彼女のことだけは礼を言います。でももう心配はいりませんので手を引いて貰えますか?勿論、キュラソーの件からも」
「嫌だ…と言ったら?」
「!…力ずくで、奪うまで。退けー!!赤井秀一!!」
安室の咆哮を合図に、因縁の二人の殴り合いが始まった。
一方その頃、コナンも独自の推理で観覧車へと辿り着いたところだった。
(奴らが仕掛けて来るとすれば恐らく…ん?)
観覧車内部に目を凝らすと、何か異質なコードが張り巡らされていた。
元を辿ると、それらのコードは全てひとつの消火栓へと集約されているようだ。
「まさか…でも下手に開けるわけには…そうだ、あの人が来てるはず!」
恐らくそれらは爆弾であることが分かったが、解体を素人が行うのは危険すぎる。
コナンは急ぎ協力者を探しに走り出す。
公安とFBIの因縁対決(と言ってもそう思っているのは片方だけという気もするが…)は、益々ヒートアップしていた。
ボクシングのフォームで攻める安室と、截拳道を駆使して対峙する赤井。
その対決はなんとも異様な光景だ。
カウンターで対抗する赤井がいくらか優位に見えたが、安室は着信音に気を取られた赤井の一瞬の隙を見逃さなかった。
安室渾身の一撃で二人はバランスを崩し、観覧車内部へ転がり落ちる羽目になった。
いい加減こんなことをしている場合ではないと訴える赤井であったが、安室の熱は収まるところを知らず…
「もう降参ですか?さあ…第2ラウンドといきましょうよ」
この男にだけは膝をつきたくない。
それは安室の意地だった。