第16章 純黒の悪夢
手探りで柊羽を抱え、コンテナの後ろに身を潜める。
(一応自由にはなったが…どう脱出するか)
そう考えていると、今度は倉庫の扉が勢いよく開かれた。
「!!バーボンがいない!」
「チッ、逃げやがったか…」
謎の第三者のお陰で、なんとか逃げたように見せかけることができた。
そう思い込んだ奴らは、逃がすまいと追いかけようとするがジンがそれを制す。
「放っておけ。残念だったなキール…恨むならヤツを恨むんだな。まあ安心しろ、すぐに会わせてやるよ。…あの世でな」
「くっ…!」
今度はキールが、ここまでかと思いかけたその時。
「ジン待って!ラムからよ」
組織のNo.2の名が、ジンの手を止めた。
「要件は?」
「キュラソーからメールが届いたそうよ。バーボンとキールは関係なかった、と」
「フッ…これで疑いは晴れたわね。さぁ、外してくれる?」
形勢逆転、漸く強気に出ることができたキールだったが、ベルモットがそれを許さなかった。
「まだよ。"これが本当にキュラソーから送られたものか確かめる必要がある"とも書いてある」
「チッ」
「仕方ねぇ。まずはキュラソーからだな。」
「でも何処へ?」
「東都水族館だ」
「!!…まさか最初から予期してあの仕掛けを…!」
そんなやり取りをして、ジンたちは倉庫をあとにした。
(東都水族館?仕掛け…?確かめる必要があるな)
安室はこれから取るべき行動を考え、まずはキールを自由にしてやった。勿論辺りへの細心の注意を払いながら。
キールは軽く礼を言うと足早に去っていってしまった。
腕を負傷してはいたが、彼女も中々のやり手だから大丈夫だろう。
そう思うことにして、安室は再び次の一手を考える。
(…何はともあれ。柊羽に怪我はなさそうで良かった)
とはいえ自分のせいで、こんなことに巻き込んでしまった後悔の念が襲う。
安室はそんな邪念を振り払うかのように、少し乱暴に、そしてきつく柊羽を抱き締めた。