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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第16章 純黒の悪夢


ところ変わって、埠頭の倉庫。

NOCの疑いがあるバーボンとキールは、後ろ手に手錠をつけられ柱に繋がれていた。

「何故あなたたちがここに連れてこられたのか、分かるわよね?」

「私たちがNOCだと言いたいの?」

「ええ、話が早くて助かるわ。キュラソーから報告があったの」

「でも殺されていないということは、まだ確証がない。…違いますか?」

「…流石ね。キュラソーの報告は完璧ではなかった。事故に巻き込まれて記憶喪失になっていてね」


"記憶喪失"と言われ、安室は別の人物を思い出していた。

(柊羽…だめだ、今はこっちに集中しろ!)

気を抜けばすぐに頭をよぎる。けれどまずは、自分がこの状況を脱しなければ。


「ならまずはキュラソーの記憶を戻すことが先じゃないの!?」


キールが噛み付いたが、言い終わると同時に響いたのは、銃声。



「ジン!?」「兄貴!!」

「まだ疑いの段階で仲間を!?」

「疑わしきは罰せよ。これが俺のやり方だ。どうしたキール?手が止まってるぞ…」



どうやらキールは手錠の鍵を外そうとしていたのがバレたらしい。
そしてこの男…ジンも、本気だ。少しの油断も許されないし、じっくり策を練る時間などない。



「鼠はどっちだ?正直に吐いた方に相手の死に顔を拝ませてやるよ」

「正直も何も、私はNOCじゃないわ!」

「僕だってそうですよ!」



苦し紛れなのは自分でも分かった。こんな主張は意味をなさないことも。
けれど考える時間を稼ぐ為には、今は泥臭くても情けなくてもこうするしかないように思えた。



「フッ…お前たちも知ってるだろう?俺は気が長くねぇ…ウォッカ」

「へい」



ジンの目配せでウォッカはなにか察したようで、何かを取りに行った。



「これを見ても同じことが言えんのか?…バーボン」



今度は自分が標的らしい。
ギロリとジンの目が向けられ、せめてもの反骨心でその目を真っ直ぐに見つめ返した。



「ホラよ」




どさり。




目の前に投げ出されたモノは、心を乱されるには十分すぎる光景で。





「お前を逃がす代わりにコイツを殺ってもいいんだぜ?」





なぜだ。
どうしてこうなった。
そんなのはもうあとの祭りだというのに。


意識のない柊羽に心の中でひたすら謝った。
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