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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第16章 純黒の悪夢


「落ち着いてきたし、そろそろ買い出し行ってこよっか?」


柊羽は店内の様子を確認し、そう梓に申し出た。


「え、でも柊羽さんそろそろ休憩した方が…」

「買い出し終わったらでいいよ!材料なくなったら困るでしょ?」

「うぅ…すみません、じゃあお願いします!」

「うん、行ってきまーす」


柊羽はエプロンを外して、カーディガンを羽織り店を出た。


(透さん、やっぱりまだ返事がないなぁ)


もしかしたらと思ってスマホを見たがやはり連絡は来ておらず、電話もかけてみたが留守電になってしまった。

(探偵って、そんなに危険なものなの?)

柊羽はポアロのお手伝いが終わったら毛利探偵事務所にでも行ってみようと思った。
小五郎やコナンから、なにか聞き出せるのではないかという僅かな希望を胸に。
しかしそれは本当に細い筋すぎて、思わずため息がこぼれてしまっていた。




「あら、ため息?幸せが逃げるわよ?」




突如背後から聞こえた声に、柊羽は勢いよく振り返る。

そこに立っていたのは、記憶に新しい女性だった。



「あ、さっきの…」

「貴女のオススメ美味しかったわ。一番が食べられなかったのは残念だけど…」



一際目を引いた客であったし、忘れるはずがない。



「"サンドウィッチの作り手さん"は今日はどこに?」

「え?」



なぜ、そんなことを、聞くのだろうか。
サンドウィッチが食べたいのならば、出勤日を聞けばいいのではないか。



「スタッフの…プライベートは、お答えできかねます」

「あら残念。どうしても食べたかったのに。」


気付けば、ジリジリと間合いを詰められていて。


「まあいいわ、今日はそれよりも欲しいものがあるの」

「え、あの…」

「ふふっ、料理なら自分でする。貴女を隠し味に、ね?」

「んっ…!?」


その女性は驚くべき速さで柊羽の頭を掴み口をハンカチで覆うと、柊羽の意識は段々と遠のいていった。

薄れゆく意識の中、柊羽はコナンの忠告を思い出していた。


『知らない人に声をかけられた時なんて特に注意だよ』


(コナン君…折角教えてくれたのに…ごめん、なさい…)


コナンへの懺悔を最後に、柊羽は闇に堕ちていった。
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