第16章 純黒の悪夢
翌朝、柊羽がポアロへの道を歩いていると、見知った顔ぶれとすれ違った。
「あれ?皆、おはよう!こんな早くにおでかけ?」
「あ!柊羽お姉さん!」
「おはようございます!」
「これからお見舞いに行くんだぜー!」
少年探偵団の皆だった。
「お見舞い?」
「うん!この間知り合ったばかりのお姉さんなんだけど…」
「とっても優しくてとってもカッコいいんです!」
「そういえば姉ちゃんと同じで前のこと覚えてねーみてぇだったなぁ…」
「え、そうなんだ…」
柊羽はこんなにも身近に似た境遇の人がいるとは思いもよらず、その人物に少し興味が湧いた。
「柊羽お姉さんも一緒に行くー?」
「会ってみたかったけど、今日はポアロのお手伝いなの。また今度紹介してね?」
「もっちろん!」
「では僕たちは失礼します!」
「じゃーなー!」
柊羽はその人物が安室透と深く関わっていることなど知る由もなく、約束通りポアロへと向かうのだった。
「おはよ~」
「あっ柊羽さん!おはようございます!今日も本当にありがとうございます!」
「ふふっ、今度透さんにサンドウィッチ作ってもらうからいいよ!」
「(柊羽さんが惚気…!でも嫌味がない!)」
「今日もホールでいいかな?」
柊羽はエプロンを身につけながら、何か1人でブツブツと呟いている梓に声をかけた。
「はっ!そうですね、お願いします。あとはモーニングが落ち着いたら買い出しをお願いできると助かるな~なんて…」
「そんなのお安い御用だよ」
「柊羽さん…!安室さんのサンドウィッチに、特製デザート追加します…!」
「わぁ、それは頑張らないと!じゃあオープンの準備しよっか」
柊羽はそう言ってテキパキと準備に取り掛かる。
梓はと言うと、こんなに健気で優しい彼女を放り出して安室は一体何をしているんだ…戻ってきたら柊羽をデートに連れていくように無理やりにでも休みを取らせなければ…と、謎の闘志を燃やしていた。
(柊羽さんだって、連絡取れなくて不安なはずなのに…もうっ!)
そして長い一日が始まるのであった。