第16章 純黒の悪夢
『あのね、柊羽姉ちゃん…もし、だけど、本当に大変なことに巻き込まれているとしたら、安室の兄ちゃんと仲がいい柊羽姉ちゃんも危ないかもしれないじゃない?』
「え?」
『んー…例えばだけど、戦ってる相手が柊羽姉ちゃんを人質にとれば有利になるでしょ?』
「そう…なのかな?」
そんなこと、映画の世界の話だとばかり思っていた。
だからあまりイメージは出来ないが、コナンの口調はとても真剣で冗談だとは思えなかった。
『可能性の話だけどね。でも、念には念をって言うし…安室の兄ちゃんと連絡が取れるまでは、柊羽姉ちゃんも気をつけて欲しい。』
「気をつけるっていっても、何をどうすれば…」
『うーん…例えば、困ってる人がいたらどうする?』
「え?そりゃー助けてあげるけど…」
『うん、柊羽姉ちゃんならそうするよね。でも、我慢して。本当に困っている人かもしれないけど、罠の可能性だってあるし。どうしても気になるなら近くにいる人に助けを求めるとか…とにかく直接関わらないようにした方がいい。あとは勿論、知らない人に声をかけられた時なんて特に注意だよ!』
「う、うん、わかった…」
『僕達もなるべく傍にいるようにするけどさ。』
「ふふっ」
『な、なに?』
「なんかコナン君、新ちゃんみたい!」
『…へ?』
「あ、新ちゃんって私の従兄弟でさ、いーっつもそうやって私の心配してくれるの!」
『…(悪かったな、従姉妹離れ出来てなくて)』
「でもなんか、コナン君がいてくれたら大丈夫な気がしてきたよ。ありがとう!」
『(なんだその自信は…)どういたしまして。何かあったらすぐに探偵バッジで連絡してね?』
「了解!」
柊羽とコナンは、なんだか前にもこんなやり取りをした気がするなあと思いながらどちらともなく電話を切った。
柊羽がスマホを博士に返す頃には、梓はもう洗い物を終えていた。
「安室さんのこと、何か分かりました?」
「今のところ何も…」
「そっかぁ…心配ですね。この調子だと明日も欠勤かなあ」
「あ、良かったら戻るまで私手伝おうか?」
「えっ!?いいんですか!?」
「うん、仕事も落ち着いてるし」
「じゃあお言葉に甘えちゃおうかなあ…」
かくして、明日も手伝いをすることになった。