第14章 緋色の真実
赤井は生きていた。
沖矢昴という男については未だに謎だが、自分たちの素性が暴かれた今、無理に追求することは避けた方が良さそうだ。
この男が赤井ではないにせよ、裏で繋がっているという可能性もある。
安室は不本意ながらもその事実を受け入れ、今日のところは引き上げることにした。
「すみません、なんだか僕の勘違いだったみたいで…失礼します」
外向きの声でそう告げ退散しようとしたが、最後にひとつだけ気になっていたことを聞いてみた。
「…なぜ、僕のような見ず知らずの人間を部屋に入れたんです?」
「話を聞いて欲しそうでしたから。随分とお喋りな宅配業者の方だな、とは思いましたけど…」
「は、はぁ…」
十中八九、嘘だろう。
厄介な相手がまた1人、いや2人増えたな…と、安室は小さな少年の姿を思い浮かべていた。
今度こそ立ち去ろうと踵を返したその時
「彼女のこと…」
今までの飄々とした口調とは少し異なるそれに、思わず足を止めた。
「くれぐれも宜しく頼みます。何かあれば私もあの方に顔向けできませんから…」
"あの方"と見つめる先には、テレビに映る工藤優作の姿。
「言われなくても」
それだけ呟き、安室は屋敷を後にした。
*
「つっっっかれた~………」
監視カメラで様子を窺い水面下で動いていたコナンは、はぁーっと肺の空気を一気に吐き出しながら机に突っ伏した。
「ったく…勝手なことすんなよなぁ」
「すまんすまん。でも私だって柊羽くんが心配なんだよ。」
「わぁーってるよ…ま、助かったぜ?父さん」
先程まで安室と対峙していた優作は変装を解き、満足気な笑みを浮かべていた。
「それにしても記憶喪失とは…うちに住まわせなくて大丈夫か?」
「まあそう思う気持ちも分からなくもないけど、このタイミングで組織のことも忘れてくれたのはある意味ラッキーかもしれねぇ。それに沖矢さんと暮らすなんて安室さんが知ったら…」
そんな想像をしたら、思わず身震いをしてしまった。
「彼が柊羽くんのことを大事にしているのはよく分かったよ。裏目に出なければいいが」
「あぁ。俺も気をつけて見ておくぜ」
「頼んだぞ。また必要な時はいつでも呼んでくれ。有希子もなんだかんだ楽しんでいたしな」
コナンは先程の母の様子を思い出し、苦笑した。