第14章 緋色の真実
楠田陸道の死体喪失。
スマホの指紋の偽装。
来葉峠でのトリック。
コナンと阿笠博士の存在。
そして、タイミングよく現れた謎の男。
全てが物語っている。
目の前の男の正体を。
「…っ赤井秀一!!!」
様々な思いを胸に、安室は沖矢の胸ぐらを掴んだ。
「なん、だと…」
そこにあるはずの変声器がないことに安室は動揺を隠せなかった。
(そんなはずは…どこだ?どこで間違った?)
自分の推理は完璧だと思っていた。
目の前の男は相変わらずどこ吹く風だ。
「電話、鳴っていますよ?」
沖矢は、乱れた襟元を正しながらそう言った。
その指摘に画面へ目を向けると、電話は公安の部下からのものだった。
「遅かったな。状況は?」
『っ赤井秀一が現れました!』
「なにっ!?」
やはり、赤井秀一は生きていた。じゃあこの男は誰なんだと、改めてその人物を見ると。
相変わらず落ち着いた様子で珈琲を飲みながらテレビを見ていた。
(一体何者だ?隠しカメラまで設置してまるで…)
この男が怪しいことには変わりなかったが、最優先事項は赤井の確保だと思い取り逃さないよう部下に指示を出す。
だが、どうも赤井相手に苦戦を強いられているようだった。
「おい!どうした!」
『久しぶりだな、バーボン…今は安室くんだったか?』
「赤井、秀一…!!」
安室は沖矢の前ということも忘れ、声を荒らげていた。
『そっちの車を1台お釈迦にしてしまったお詫びに、楠田陸道が自殺に使用した拳銃を預けよう。ここは日本だ、君たちの畑だろう?』
「まさかお前っ…僕の正体が!」
『あだ名がゼロだとあの坊やに漏らしたのは失態だったな…降谷零くん?』
「っ!!」
自分の作戦が失敗に終わった上に、こちらの正体がバレる始末。
まさに戦意喪失…というところへさらに追い討ちがかかる。
『目先のことに囚われて、狩るべき相手を見誤らないでいただきたい。君は敵に回したくない男の一人なんでね。』
いつもそうだ。この男の飄々としたこの態度が、気に入らない。
『それと…彼のことは、今でも悪かったと思っている。』
忘れるはずがない、親友の最期。
生かす選択をしなかった赤井秀一。
今更謝られたところで、アイツはもう戻ってこない。
安室はぎり、と歯を食いしばった。