第14章 緋色の真実
そして、運命の時はやって来た。
安室はこれから暴かれるであろう真実に高揚感を抑えきれずにいた。
ピンポーン
インターホンを押すと、中からは目当ての人物が顔を出す。
「こんばんは。はじめまして…安室透です。」
「はあ…」
「でもはじめましてではありませんよね?」
一応疑問形にはなっているが、それは質問というよりも尋問に近い雰囲気だ。
煮え切らない反応をする相手にペースを乱されそうになりつつも、ぐっと我慢をした。
(落ち着け。認めたくはないがこの男は油断ならない相手だ。)
そう自分に言い聞かせるのだった。
警戒されるかと思ったが、すんなり家には入れてもらえた。
待機させていた仲間に気付いたのは流石といったところか。
リビングに通されると、ある物が目に入る。
「なぜ…それがここに?」
「ん?あぁ、パソコンですか?ある方の商売道具なのですが、少しの間ここで仕事をすることになりまして…」
「それが何故かと聞いています」
それは間違いなく柊羽のパソコンだった。
そして沖矢の言葉に、安室は苛立ちを隠しきれていなかった。
「ここの家主の親戚の方なんです。娘同然に可愛がっているから何かあったらくれぐれも頼むと言われていて…」
「…記憶喪失になったから、貴方が匿っている、と?」
「おや、彼女のことをご存知でしたか」
「ふっ、白々しいな。貴方ならその程度の情報知っていたでしょう」
「はぁ…」
「まあいい。匿う理由は本当にそれだけですか?」
「匿う?随分と物騒な響きですね…何故そんな必要が?」
「郷に入らば郷に従え…とでも言えば満足ですか?」
「言っている意味がよく…」
何としても口を割るつもりはないらしい相手に、気付かれないように安室はため息をついた。
ただでさえ、いつも傍にいてやれないことがもどかしいというのに、その隙間を別の男に__しかも憎きFBIかもしれない男に埋められていると思うと…
柊羽を守るのも、この国を守るのも自分でありたい。
それが自分の使命だと。
ここ最近より一層そう感じるようになったのだ。
「では本題といきましょうか…ミステリーはお好きですか?」
余計な駆け引きは必要ない。
こんな茶番は早く終わらせて、彼女の元へ。