第14章 緋色の真実
そして翌日、柊羽は工藤邸へと向かっていた。
高校生姿の新一を見たいのは勿論だが、何よりも、新一ならこれから自分がどうすればいいか教えてくれるような気がしたから。
(仕事のことも聞かないとな…再開未定のお休みなんてできないし…)
風見から、自分がWebデザイナーということは聞いたが、何をどうしたらいいか分からなかった。
工藤邸に到着し、勝手知ったる親戚の家ではあったが一応インターホンを押す。
『お待ちしてました』
機会越しの声は聞き覚えがなかったが、なくした記憶のせいだろうと受け入れた。
「お邪魔しまーす」
『こんにちは。調子はいかがです?』
「体調は良いです。えっと…新ちゃんは?」
相手には申し訳ないが覚えていない人物とのサシは些か居心地が悪く、柊羽は新一に早速助け舟を求めた。
「彼はまだ来ていません。それまで貴女を宜しくと言われていますし、私は貴女の知り合いですから安心してください。」
(そんな事言われても…というか新ちゃん、何勝手に宜しくしてくれてるのよ!)
どうしたものかと考えていたが、相手はさほど気にする様子もなくマイペースだった。
「あぁそうだ。名前、分からないんでしたね。沖矢昴と言います。とりあえず、お仕事の話でもして待ちましょうか。」
「え…」
「休むわけにはいかないでしょう?良ければ慣れるまでサポートしますよ」
沖矢は、まるで柊羽の心を読んでいるかのようにどんどん話を進めていった。
その強引な優しさに、柊羽はとりあえず身を委ねておくことにした。
「ふぅ、何となく分かりました。本当に助かりました。」
「やっと警戒心も解けましたね」
「う…すみません。私が忘れた癖に警戒なんてしてしまって…」
「仕方ないでしょう。気にしないでください。」
「…沖矢さんはどうして、そんなに親切にしてくれるんですか?」
それは、単なる興味と言えばそうだが、何故か本能がそう聞けと訴えてくるような不思議な感覚で。
「貴女と…約束しましたからね。ピンチの時には駆け付けると。」
そう言う沖矢の瞳が少し開かれた。
初めて見る顔のようで、どこか既視感もあった。