第3章 縮む距離
私たちは、どこか似ている。
理由は違えど、安室さんも恋人という存在に牽制している、そんな気がしていた。
(まぁ、こんだけモテてりゃ、それだけで楽しいか)
「また考え事ですか?」
「えぇ、まぁ」
「残念、今度は僕の事じゃなかったようですね」
「言葉の割に全然残念そうじゃないことは見なかったことにしてあげます」
安室は一瞬目を見開き、ははっと笑った。
それは、初めて見る"素"のような気がした。
「そんな笑い方もするんですね」
「え?」
無意識だったのか、一瞬驚いたように見えたがすぐにいつもの調子に戻った。
「柊羽さんは僕をなんだと思ってるんです?」
「うーーん…サイボーグ?」
素っ頓狂すぎる答えに、安室はキョトンとしていた。
「あ、えー…なんか…すみません?」
柊羽は無言に耐えられず謝った。
「疑問形で謝られたのは初めてです。でも、そうですね…もし、普段とは違う僕が見られているとしたら、それは」
「すみませーーーん!注文お願いします!」
「はい、ただいま!
___残念、ではまた後で」
今度は本当に残念そうに、安室は呼ばれたテーブルの方に向かっていった。
(なんだろう、意味深…まぁ、いっか。)
言葉の続きが気にはなったが、柊羽は仕事を再開した。
仕事をしている間は、話しかけない。それがポアロ店員の暗黙のルールだった。