第14章 緋色の真実
(あの子確か、昨日の…)
そう、彼女は昨日柊羽と遭遇していた。
本当の姿___ベルモットとして。
今はバーボンからの依頼でFBIの1人に成りすましていた為、柊羽は気付くわけがなかった。
基より変装をしていなくても、今の柊羽は気付くことができないのだが。
2人はお互いに特に気にすることもなく、それぞれの方向へ再び歩き出した。
(あ、そうだ。新ちゃんに連絡しとこうかな…)
そう言えば、記憶がなくても感覚が覚えていたのか、今朝の書き置きをすんなり受け入れていたことが今更ながらに引っかかった。
思い出せるその姿は小学生か中学生くらいのものだ。
(今は…高校生?なんか楽しみだなあ)
とりあえず今は風見もすぐに来るだろうし、あとで話したいとだけメールをしておいた。
まもなく風見がやって来て、二人は無事帰路に着いたのだった。
一方安室も、この日のミッションを終え満足のいく結果に安堵しているところであった。
(柊羽も無事帰ったようだし、風見には今度何かご馳走してやろう)
そう考えていると
「そう言えば、さっき病院で昨日の子猫ちゃんを見かけたわ」
「昨日の…?あぁ、あの今にも泣きそうだった…」
「色男は一体どんな仕打ちをしたのかしら?」
「さぁ?いちいち覚えていないと言ったでしょう」
「組織がらみで相手をする必要のある子には見えなくてね、ちょっと気になっただけよ」
「はぁ…だったらもっと貴女には関係ないでしょう」
「ふふっ、そうね。そういうお年頃だしどう遊ぼうと貴方の勝手だけど…悪目立ちはしないようにすることね」
「ご忠告どうもありがとうございます」
ベルモットと柊羽が同じ病院にいることは分かっていたが、まさかあの広さで遭遇するとは思っていなかった。
安室はベルモットの忠告のような挑発のような口車に乗らないようポーカーフェイスを決め込んだ。
組織に興味を持たせてはダメだ。
そうなれば今度こそ本当に身を引かなければならなくなるだろう。
彼女が記憶をなくしているのは考え方によっては幸いかもしれない。
今なら、危険なところに足を踏み入れようとすることもないだろう。
これは、柊羽がくれたチャンス。そう思うことにした。
(時は満ちた。待ってろよ…赤井秀一!)