第14章 緋色の真実
その日、コナンと安室はとある小学校で対峙していた。
安室は、ストーカー被害の依頼を受けた探偵という大義名分を掲げて。
コナンはその安室のもう1つの隠された目的を阻むために。
とは言え目の前に事件があれば解決したくなるのが探偵の性。
トリックを見抜こうと考え込んでいると、ふと上から声が降ってくる。
「昨日、彼女のことを見つけたのは君だろう?」
「え…」
何で知って…?と思わず声の主に顔を向けたコナンだったが、その主_安室は周りから注目されないよう手を顎にあて考える素振りを見せながら視線は事件の現場検証の方へ向けている。
それに倣いコナンもポケットに両手を突っ込み、視線を同じ方向へ向き直した。
「今朝会いに行ったんだ。友人に病院の付き添いを頼んでおいた。」
「安室さんの、友達…?」
何故そんなことをする必要があるのかとコナンは考え込んだ。
確かに病院へ行くという連絡は来ていたが、ただの頭痛でそれはいくらなんでも過保護ではないだろうかと。
「その様子じゃまだ知らないみたいだね。」
「…?」
「記憶がなかった。昨日のことも…恐らくここ数年のことも。」
「なっ…!?」
取り繕うことを忘れる程の衝撃だった。
まさか…いや、でも、柊羽が置かれていたであろう状況を考えれば有り得ない話ではない。
最近打ち明けた組織の話ももしかしたら心を追い詰める要因になってしまったかもしれないと、今更後悔をした。
「心当たりがありそうだね。昨日…何があったんだ?」
「僕たちが行った時にはもう一人だったから詳しいことは…。でも入れ替わるように去っていった男がいたのと、見つけた時は、また過呼吸になってた。」
「なるほど…僕"たち"、か」
まさかそこに焦点が当てられるとは思っていなかったコナンは内心焦り、話題をすり替えようと試みる。
「そっちこそ、友人って?」
「ん?そのままの意味さ、信頼出来る友人だ。」
流石にこんな付け焼き刃の策ではダメか。
なら、もう一押し。
「ゼロ…安室の兄ちゃんってさ。敵…だよね?」
ここで初めて、安室の瞳がコナンに向けられた。
「悪い奴らの…」
そう付け足すと、今まで穏やかだった安室の表情が一変した。