第14章 緋色の真実
「そう言えば…起きた時頭がズキズキしました」
「だろう?気も失ってしまったし打ちどころが悪かったのかもな…」
「…ごめんなさい」
「なんで柊羽が謝る?」
「こんなに心配してくれてるのに分からないなんて…失礼だなーと」
「…柊羽らしいな」
そう呟いた安室の瞳が慈愛に満ちているように思えて、柊羽の顔に体中の熱が集まった。
無意味であることは承知の上で、頬を両手で覆う。
「あの…その…安室さん、て私の…」
「透」
「へ?」
「"透さん"と呼んでくれていた」
「透、さん…」
下の名前で呼ぶほど親しかったとは。
益々忘れてしまったことへの罪悪感が深まった。
柊羽が俯いていると、ふと頭に重みを感じる。
「そんな顔するな。すぐに思い出せるさ。」
それは彼の掌で。
それだけでとても安心できた。
きっと自分は、この人のことが大好きだったんだろうなと思う。
「頑張ります」
「頑張らなくていい。できるだけリラックスしろ。」
「でも…」
「こういう時はリラックスすることが一番なんだ。そうだな…少しでも無理したら、またするぞ?」
「…?」
なんの事だと考えていると、指の腹で唇を撫でられた。
その行為で先程のキスが脳裏に過り柊羽はまた顔が熱くなるのが分かった。
「わ、分かりました!!」
「ん、いい子だ。ただ念の為病院は行った方がいいな。僕がついていきたいのは山々なんだが…今日は外せない用があって。僕の友人に付き添いを頼もうと思うんだが…大丈夫か?」
「病院くらい1人で…」
「それじゃ僕が心配で気が気じゃなくなるだろ?一応確認はしたが拒否権はない」
横暴だ…と思いながらも、やっぱり嫌な気はしなかった。
そんな柊羽の受け入れる様子を確認し、安室はある人物に電話をかける。
「近くに来ているか?…あぁ、頼む。」
そのすぐ後、玄関がノックされた。
「入れ」
そう放った時の表情から、この人の威厳が垣間見えた。
入ってきたのは想像していた友人像とはかけ離れていたが、ガタイがよく真面目そうな青年だった。
「僕の友人の風見だ。取っ付き難いが悪い奴じゃない。」
「坂巻です。宜しく御願いします。」
風見はぎこちなく笑っていた。