第14章 緋色の真実
翌朝コナンが目を覚ますと、柊羽はまだ夢の中だった。
今日はおそらく安室…否、バーボンがなにか仕掛けてくるであろうと踏んでいたので1日ついているという訳にもいかず。
着替えたり必要なものをまとめたりするのに今のうちに一旦帰ることにした。
必要ないかとも思ったが、念の為「起きたらまず連絡してくれ」とダイニングテーブルに書き置きを残して柊羽の家を出た。
柊羽が目を覚ましたのは、それから小一時間ほど後のことだった。
起き上がると頭痛がしてとてもいい目覚めとは言えず眉を顰めた。
そして同時に湧き上がる違和感と、根拠の無い不安。
別に身体は異常はない。なのに自分が自分でないような不思議な感覚。
のそりと立ち上がり、乾いた喉を潤そうとキッチンへ向かうと、テーブルの上の紙切れが目に入る。
(新ちゃん…?来てくれてたんだ)
連絡は一息ついてからでいいかと、コーヒーを淹れることにした。
電気湯沸かし器に水を入れてスイッチを入れる。
そして淹れる前のコーヒーの香りをゆっくりと堪能する。
柊羽はこの瞬間がとても好きだ。
ピンポーン
誰だろう、何か荷物でも頼んだかなと思いつつ応答する。
「はーい」
『柊羽か?良かった…少し、いいか…?』
「え、と…」
柊羽は戸惑った。
来客は明らかに自分を知っていて、雰囲気から察するに大事な用があるらしい。
…が、その声に心当たりがない。
新手の詐欺か?
悪徳セールスか?
いずれにせよ、もう居留守は使えないしどうしよう、と考えていると反応がなくなったこちらに痺れを切らしたのかノックが聞こえた。
「柊羽?大丈夫か?」
「あ、だ、大丈夫です!」
とりあえずチェーンロックを掛けてからと思いチェーンに手をかけた瞬間、外にいる人物によって玄関が開かれた。
そこにいたのは見覚えのないイケメンで。
誰だっけと考える間もなく相手は室内へ足を踏み入れそのまま強く抱きしめられてしまった。
「はっ?え?」
「昨日は…ごめん。あの女の前で柊羽のことを知り合いだと言う訳にはいかなくて。」
「あの…!?んっ」
そして優しく頭を抱えられ、遠慮がちな唇が降ってきた。