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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第14章 緋色の真実


「ごめんなさい、ちゃんと見てなくて…」

「あ?」


柊羽がちらりと顔を見上げると、いかにも悪そうな若者だった。
男は柊羽の顔を見るなりニヤリと不敵な笑みを浮かべさっと腕を掴んだ。



「ちょっ、何…!」

男に手を引かれる感覚に、ドクンドクンと鼓動が早まる。
もう限界と思うと同時に解放されたと思えば、そこは人気のない路地裏で。

不吉な予感に、背中を冷や汗が伝う。



「ちょうどむしゃくしゃしててよ、お詫びに相手してもらおうじゃねえか。」



そう言うと男は舌なめずりをし、下衆な笑みを浮かべていた。
お詫びならさっき言ったじゃないか。
だがそんな言い分が通る相手ならそもそもこんなことになっていない。

これは一か八か、大声で助けを呼ぼうと柊羽は決心した。



「たっ…んぐっ!」



が、男の手によって阻まれ叶わなかった。
口を抑えられた衝撃で打った背中が痛い。
男は容赦なく己の片足を柊羽の足の間に捩じ込み空いていたもう片方の手で柊羽の両手を拘束し動きを封じた。



「ヘタな真似すんじゃねぇ。心配しなくてもすぐにヨくしてやるよ。」



耳元でそう囁かれたと思ったらその流れでペロリと首筋を舐められ全身が粟立った。




コワイ。

また、あの悪夢を繰り返すのか。

『嫌って言う割に…身体は正直みたいだけど?』

『まだだっ、オラッ…休んでんじゃねぇっ』




柊羽は知っていた。

男女の圧倒的な力の差を。

折角克服し始めたところなのに、また、同じことを繰り返すのか。

けれど助けて欲しいと思う人はきっと…いや間違いなく来てはくれない。

無情にも、悔しさと恐怖で溢れた涙は、目の前の男を煽る材料にしかならなかった。




「その顔、ソソるな…」




今度は乱暴に、首筋に齧り付く。

柊羽の心は、もう限界だった。

呼吸が浅くなるのが分かるのに自分ではどうにも出来ない。


「ん?」


男は異変に気付き顔を上げ、柊羽の口を塞いでいた手を退けた。


「っは!…ぅあ、は…はっ」


苦しい。呼吸の仕方が分からない。

と、突然支えになっていた足を引き抜かれ柊羽は重力に従い蹲る形になった。
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