第14章 緋色の真実

「なんでその名を、という顔をしてますね」


やはり苦手だ。
この、何もかも見透かされているような感じが。



「僕は彼が、赤井秀一を追っていると踏んでいます」

「だったら何だって言うんですか？」

「危険すぎますね。止めさせた方がいい。」



またそれか。
そして肯定もしていないのに、勝手に話を進めないで欲しい。




「何者なんですか？その、赤井って人。」

「彼に情報を漏らさないことを約束して頂けるならお話します」


本当、抜かりない人だと思う。
敵に回してはいけない人物。
だけどこうも挑発的だと、素直に何でも従えないのも事実で。

そして柊羽は先日、安室に約束してしまった。
赤井の情報を掴んだら共有する、と。

沖矢の条件を飲まなければ、情報は得られない。
かといって条件を飲んだところで、安室には教えることができない。
こんな相手でも裏切り行為はしたくないと思うお人好しな性格を恨んだ。


黙りこくってしまった柊羽に、動いたのは沖矢の方だった。



「まあどうせ、赤井秀一に関する情報は彼に流せとでも言われているんでしょう？」

「…っ！なんなんですか！からかうだけならもう帰ります！」


言った勢いで踵を返そうとしたら、コナンに制された。


「待って柊羽姉ちゃん。…昴さんも、ちょっとやりすぎだよ」

「すみません、柊羽さんを見るとつい」

「………やっぱり帰る！！」





2人に背を向けたその時。





「赤井秀一は、元組織の一員です。」





その言葉にピクリと柊羽は反応した。
また、組織か。
もう自分は引き返せないところまで来ているんじゃないかと思った。




「コードネームはライ。バーボンとは反りが合わなかったようです」

「透さん…っていうか、話していいんですか？私、他言しないなんて約束してませんよ？」

「貴女はそんなことしないでしょう？」




『僕の知る柊羽はそんなことしないさ』




沖矢の一言が、あの日の安室と重なって。
それは胸の奥がキュッと掴まれたような感覚で。
とっとと話題を変えたかった。



「ですね。本当かどうか分からない話は透さんにはできません」

「おや、私は随分と信用がないんですね」


沖矢は言葉とは裏腹にどこか楽しそうだ。