第14章 緋色の真実
柊羽はその日のタスクを終え、重い足取りで工藤邸に向かっていた。
(はぁ…なんか嫌な予感しかしない。)
何より、あの二人に宣戦布告まがいなことをしておきながら未だ足踏みをしている状態ということが後ろめたい。
ほら見ろ、とでも言われるんだろうなーと憂鬱を抱えながらインターホンを押した。
『どうぞ、開いてます』
私じゃなかったらどうするつもりだったのか。
というかもうすっかり我が家になってないか。
そんな文句を心で唱えながら、家の中へと足を踏み入れた。
「柊羽姉ちゃん、いらっしゃい」
「用件は?」
「そんなに慌てなくても、とって食いはしませんよ」
「話があるから呼んだんでしょう?」
「いつになく警戒心が強いですね。彼と喧嘩でもしたんですか?」
「ご心配なく!順調です!」
「まあまあ、とりあえず座ろう?コーヒーでいい?」
「…私がやる」
長居はしたくなかったが、家主と言えど今は小学生のコナンにやらせるのも気が引けた。
コーヒーを煎れている間の沈黙が、肩にズシンとのしかかるようだった。
「どうぞ」
コーヒーを置き、空いているソファへ腰掛ける。
「何か言いたいことがあるんでしょ?じゃなきゃわざわざ私をここへ呼び出すわけがないです」
「…今日、杯戸中央病院で安室さんに会ったよ」
「病院?なんで?」
捜査中に怪我でもしたのかと思い焦る柊羽にコナンが宥めるように続けた。
「あ、安心して。安室さんはお見舞いに来てただけみたい」
「そっか…っていうかコナンくんはなんで病院に?」
「蘭姉ちゃんのお母さんのお見舞いに…」
「英理さん?大丈夫なの?」
「うん。虫垂炎だってさ。」
「よかった…で、本題は?」
無事ならそれでいい。
今はとにかくここに呼ばれた意図を知りたい。
「安室さん、何か探りに来ていたみたいで。何か聞いてる?」
「いや?何も…」
と言ったものの、そう言えば"アカイ"という人物の話をしていた。
でもそんなこと安室の許可無く2人に言ってもいいものか。
そう思って本当のことを言えずにいたが…
「赤井秀一」
聞いたばかりのその名を紡いだのは、今まで黙っていた沖矢だった。