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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第13章 付かず離れず


「あ、これ面白そう!」


そう言って柊羽はお目当てのものを指さした。


「銭占い?」

「この和紙を境内の池に浮かべて小銭を乗せて、和紙が沈む時間で占うみたいですよ」

「へぇ、初めて見ました」

「ですよね!やってみましょう!」



2人はそれぞれ和紙をもって池にやって来た。
同時に水に浮かべてみると、濡れたところから文字が浮かび上がる。

「わぁ!こんな仕掛けもあったんですね!」

子供のように喜ぶ柊羽の姿を安室は優しく見守っていた。

「んーと…私のは"迷わずに進め その先に吉報あり"」
「僕は………"急がば回れ 焦りは禁物"…か」

なんとなくその言葉に背中を押された気分の柊羽だったが、一方安室は少し引っかかっていた。
占いなどの類を信じている訳では無いが、嫌でも視界に入るそれを意識せずにはいられない。

(まだ本当のことを言うべきではない、か)

珍しくボーっとしていると、心配そうに覗くビー玉のような双眼が見えた。


「あ、早く小銭を乗せないと」


心配させまいとその肩を抱き、池の縁にしゃがみ込んで五円玉をそっと置いた。



「15分以内に沈めば、早くに願いが叶うそうですよ」

「え、いつの間にそんな情報!なんか素敵ですね。でも15分って結構長いですね」

「急ぐこともありませんし、のんびり待ちましょう」



流石に15分しゃがんでいるのは辛いので、近くのベンチに腰掛けることにした。
ゆらゆらと水面に揺れる二枚の紙をただじっと見つめる。
忙しなく人が行き交う都心では味わえないこの時間が、柊羽にはとても貴重に感じられた。



「なんか、すごーく贅沢だな~」

「贅沢?」

「はい、この時間。何にもしてないけど、エネルギーをいっぱい貰ってるっていうか」

「確かに。でもいいんですか?」

「何が?」

「なにか願い事をしておかないと、15分以内に沈んでも意味がありませんよ?」

「あっ!そっか!」



安室の指摘に、顔の前で手を合わせギュッと目を瞑る柊羽。
それは真剣そのもので、安室は思わず口を緩めさせた。




(柊羽がこの先もずっと、笑顔でいられますように)




その顔を見ながら、自分も願い事をした。
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