• テキストサイズ

欲望ノ枷【R18】

第3章 散り、咲き乱れし華【R18】




来客を知らせに来たのは執事、陸であった。


煌「客人の名は聞いたか?」

陸「は、はい!確か、白銀様と…」

煌「チッ…分かった」


雪音の惚けた様なトロンとした目と紅く染まった頬が、離れている陸の目からも見てとれた。
一瞬だけ驚いた様に煌を見る陸。
その視線を嘲る様に笑い、陸の肩を軽く叩いて部屋を出て行ってしまう煌。

陸は雪音の元に駆け寄りたかった、けれど、出来ずに居た。
陸も男。
肩を僅かに上下させて呼吸する雪音。その都度浮き沈みする胸元、その膨らみに思わず目が行ってしまう。

幼い頃から見てきた従妹、そんな彼女の上気した頬に潤んだ瞳。
その普段とまるで違う表情に、腹の奥から湧き上がる様な、まだ名を付ける事の出来ないドロドロとした感情に鼓動が速くなる。


雪音「り…く君?」


自分が今どんな顔で陸を見詰めているかなど露知らず、雪音は微睡みの中にでもいる様なとろんとした、尚且つ熱を帯びた視線を向けて問い掛ける。

兄と重ねてしまった唇。
それは子供の頃にして貰ったおやすみのキスとはかけ離れた、男女がする愛の証明の様な口付け。
事を思い出すだけでも、雪音の頬を真っ赤に染めるには充分であった。

突如顔を赤面させ、雪音は慌てて僅かに乱れた髪を直す。
陸はといえば、雪音同様に赤面して顔を背けていた。


陸「雪音ちゃ……お嬢様、もう少しで夕食の用意が出来ます。お客様もいらっしゃった様ですし、お洋服の御召し替えも致しませんと…」

雪音「ぁ……うん」


顔を背けたままに雪音に伝える陸の目は、誰がどう見ても小刻みに揺れる様に泳いでいた。
雪音は初めて感じる羞恥という名の居心地の悪さに直ぐ様立ち上がれば、陸の方を見る事も無く自室へと向かって行った。

未だ続く映画では、終盤となった犯人であろう男がとある男の体を切り刻んでいた。
切り刻まれていたのはあの青年の腕であった。
巻かれていた包帯が外れ、手には青年が隠していたストリートギャングの一員であったという証。蛇が獅子に絡み付く、何とも攻撃的な刺青が彫られていた。

最後に、犯人であろう男の後ろ姿が映し出される。

それは、青年が町にやって来た時に言葉を交わした生真面目な町長であった。


/ 32ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp