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欲望ノ枷【R18】

第3章 散り、咲き乱れし華【R18】




陸には、この映画に見覚えがあった。
雪音がひそかに、いつか兄と見るのだと言って、楽しみにしていた作品。
雪音自身すら見る事無く、雪音の部屋にずっと仕舞われていた物だった。

陸はテーブルに置かれたリモコンを取ると、画面へと向け、電源を切った。




玄関へと向かうと、もう既に屋敷内に入り我が物顔で飾られた絵画を眺める姿。

白銀 吟。

全てを壊すかの様な目で睨み付けてくるこの男の目を、煌はどうしても好きにはなれなかった。
煌が社長となる前の、煌の元上司。
その冷徹とまでいわしめた職務態度は、嫌悪すら感じる程であった。


煌「お早いお着きで」


煌が皮肉に述べる。
すると、白銀は煌を視界に入れる事もなく問い掛ける。


白銀「で?被験者になったっつう物好きな雌豚は何処だ?」


白銀の言葉を聞いた瞬間、煌の頭に流れる血が一気に下り、そして全身を熱くする程に勢い良く駆け巡る。


煌「雪音は豚なんかじゃない!!」

白銀「…っと」


煌は、その端整な顔を真っ赤に染め上げ、怒りに震える拳を振り上げ殴りかかった。
勢い良く殴りつけたのは、生前父が大事にしていた絵画の一つ。
一際大きく描かれたダリアの花が、まるで手折られたかの様にくしゃくしゃになってしまっていた。

そんな渾身の煌の怒りを込めた拳を、白銀はまるで子供の遊びに付き合うかの様にひらりと余裕でかわす。


白銀「いい加減、学習したらどうだ?紫月。いや、今は社長様だったな」


フンッと軽く鼻で笑い、腕を組んで壁に背を預ける様にして凭れ掛かる白銀。
煌は何を言われても怒りが治まらなかった。
妹を侮辱された。自分が今回の計画の被験者に妹を選んだというのに、目の前の男が妹を家畜扱いする事が何より許せなかった。

不意に、先程口付けを交わした唇が熱くなる。
煌は、愛しい妹の顔を頭に思い浮かべるだけで、冷静になれる自分がいる事に驚いた。


煌「まだ皆到着していないので、客間にてお待ち頂けますか?あ…丁度良かった。天宮さん、此方の方を客間にお通しして」

天宮「畏まりました、旦那様」


静かに頭を下げるその仕草は、彼女の着用するメイド服をより洗練された尽くす女として印象付けるには充分であった。

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