第3章 散り、咲き乱れし華【R18】
片付けを終え、煌は電話を掛ける為に自らの部屋に入った。
雪音は兄の邪魔はすまいと、夜に兄と食べようと、執事の陸に手伝って貰いながらケーキを作っていた。
煌の部屋…__。
煌「僕だ。夜には皆連れて来い」
野崎「承知しました」
通話は直ぐに途切れた。野崎が返事をした途端、煌が通話を切ったのだ。
一人、自らのデスクに備え付けた椅子に腰掛け、夜が待ち遠しいとばかりにほくそ笑む。
しかし、次の瞬間…携帯が振動を始める。
着信。携帯画面には、白銀 吟…と表示されていた。
煌は一瞬表情を強張らせるも、大きく息を吐き出して電話に出た。
煌「はい」
白銀「お前にしては行動が早いじゃないか、上出来だ」
煌は体を一瞬だが強張らせた。
白銀には、まだ伝えていなかったのだ。決行日が今日である事は。
まさか、白銀はそんな事まで情報を掴んでいるというのだろうか?
煌「…今日であると、何処で?」
白銀「ほう、決行は今日だったか。やはりまだまだ詰めが甘いな、隠すならもっと上手くやれ」
フンッと鼻で笑うと、白銀は通話を一方的に切ってしまった。
通話が切れたものの、煌は携帯を耳に当てたまま固まっていた。
煌はしてやられたのだ、まんまと白銀の誘導に引っ掛かってしまった。
煌「……クソッ!!!」
煌は持っていた携帯を壁に叩きつけた。
壁に叩きつけられた携帯の画面はひび割れ、そのまま無惨にも床に落ちて角が欠けてしまった。
煌は更に怒りをぶつける様に自らのデスクに乗っていた物全てを腕で払い、床にぶちまけた。
そして何一つ無くなったデスクを拳で殴り付けた。
そして、屈辱を噛み締めながら野崎にもう一つ所持していた携帯で電話を掛けた。
煌「夜、白銀 吟も連れて来い」
そう一言だけ告げ、通話を切った。
キッチン…__。
雪音「陸君、次、小麦粉で良いのかな?」
陸「雪音ちゃ…お嬢様、小麦粉は最後に混ぜ合わせるんですよ。えっと、次は…玉子ですね」
雪音は陸の事を執事としては扱わない。昔の、ただの従兄弟であった時のまま、態度は変わらない。
陸も本心では同じであった。雪音を可愛い妹の様に思っていた、あの頃に戻りたいとさえ思った事もある。
陸は、雪音が唯一敬語を使わない存在でもあった。