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欲望ノ枷【R18】

第3章 散り、咲き乱れし華【R18】




最後の皿を洗い終えた所で、屋敷に通いで来ているメイドが顔を出した。
彼女の名は【天宮 蓮(あまみや れん)】
一見男性の様な名だが、正真正銘女性だ。僅かに茶色かかった黒髪を腰まで伸ばしているが、屋敷にやって来た時には既に髪は結い上げられている為、二人は彼女が髪を解いた姿を見た事が無かった。


天宮「旦那様、御嬢様、おはよう御座います。本日の御予定をお聞かせ願えますでしょうか?」


頭を下げる、天宮。
彼女の言葉は静かに、単調。必要事項だけを述べる様な、そんな淡々とした口調の中に、確かな敬意が込められていた。
天宮は雪音や煌が屋敷に残っていても、何も言う事は無い。
彼女は毎日、決められた仕事と言い渡された仕事だけをそつなくこなし、帰って行く。

頭を下げたまま待つ天宮に、煌が返事をする。


煌「今日は家に居る。君は夕食の準備を終えたら帰って構わないよ」

天宮「畏まりました、旦那様」


雪音には、非常に淡々とした会話に聞こえた。
再び深く頭を下げると、キッチンから出て行こうとする天宮を、煌が引き留めた。


煌「天宮さん。桜庭と陸に、夜は自分の持ち場を離れるな、そう伝えてくれるかな?」

天宮「畏まりました」


紫月家の屋敷には通いのメイドである天宮の他に、住み込みの執事が二人居る。

桜庭、そう呼ばれたのは【桜庭 聖(さくらば ひじり)】
使用人のまとめ役を務める、煌の専属執事をしていた男だ。
要が死んで、煌は使用人を殆ど辞めさせた。計画していた自らの野望に、邪魔な人間は切り捨てたかったのだ。
桜庭は煌の理解者で、また、同じく黒い欲望を秘めた男であった。

陸…そう呼ばれたのは【紫月 陸(しづき りく)】
父、要の弟の子で、陸の両親は陸が幼い時に交通事故で亡くなっていた。
陸が要に家に置いて欲しいと頼み、今に至る。
要は元より陸を引き取るつもりだった。しかし、ただ引き取られるという事に気を遣う陸を、執事として置いたのだ。
陸はとても気優しく、穏やかで、雪音の良き相談相手であった。

そして、もう一度頭を下げると、天宮はキッチンを後にした。


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