第10章 スティーブ&トニー(MCU/二次創作)
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キャプテン・アメリカの歴史とはスミソニアン博物館でその全てが展示されているらしい。らしいというのは俺自身、博物館を一度も訪れた事がないからだ。展示内容は主に第二次世界大戦中の……俺がヒドラだった時の歴史なので、それ故に抱く罪悪感に押し潰されるのが恐ろしいあまり見ることができないというのが理由だ。
まあそれはさておき、その展示の中にはやはり俺の話も結構出てくるそうなのだ。スティーブ・ロジャースには幼馴染の親友であるジェームズ・ブキャナン・バーンズと、深い親交を持った学友であるレイン・フリーマンが居たという記述から始まり、バッキーは彼のサイドキックとして、俺はヒドラへ堕ちて敵対するヴィランとして分岐する。
さて世の中は奇妙なもので、そんな俺達の壮絶な人生における人間関係を目の当たりにすると胸が高鳴って仕方なくなる人々がいるそうだ。俗称は……忘れてしまったが、その人達は自分の内に秘められた膨らんで抑えきれない気持ちを芸術的に表現する。それが……『にじそー』……『に、じ』『そーさ』……。
「二次創作だ、無知でウブなチェリーくん」
「やかましい余計なお世話だ」
「世間は見ているんだな。お前達がどんな形で収まるのが懸命なのかを」
「これは作者の妄想だろうっ! スティーブは俺に自分好みの下着を履かせてこようとはしないっ!」
パソコンを閉じたあと机上へ肘を置いて手指をマリアホールドしている最中もいやらしい笑みを止めないトニーについ食ってかかってしまう。挑発に乗ってはいけないと分かっているのに口答えせずにはいられない。なにやら俺の気持ちが世間に透けているようで恥ずかし過ぎる。ましてや彼まで俺の事が好きという設定は余りにも心臓に悪過ぎじゃないか。
「赤くなって、まあ」
「からかうなローディ、仕返しのつもりか」
「可愛いものだなぁ」
「お前はうるさいぞ、トニーッ!」
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