第10章 スティーブ&トニー(MCU/二次創作)
「きみのかわいいけつをおさめるぱんてぃをかわないとな」
なんの呪文だと耳を疑ったが、理解した瞬間に口からコーヒーを吹き出した。運悪く正面に座っていたローディがブチ切れながら俺の頭を激しく殴りつけてきたけど、寧ろ合金の俺に拳を打ち付けたせいで痛い思いをしたのは彼の方だったので全面的に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。謝罪しながらジーンズのポケットからハンカチを取り出してローディに差し出すと小言を言いながらも受け取ってくれた。一連の流れを見て満面の笑みを浮かべているのは、俺にコーヒーを吹き出させた台詞を言い放ったトニーその人だ。
大人しくパソコンでネットの大海を泳いでいたのは最初だけ、世の中を何も知らない俺に現代を教えてやろうと息巻いて色々な知識や情報を読み上げだしたら、これが結構楽しかったのか全く止める気配がない。元々お喋りなのだなと分かる饒舌さで淀みなく語り続け、次々とジャンルを問わず読み上げた。
ある時、急にトニーは黙りこくった。信じられないものを見たように眉を上げて目を見開いている表情につい興味を惹かれてしまった俺は彼に問うてしまった。『どうした』と。次の瞬間、彼は頬をだらしなく脂下げて睫毛を震わせながら笑った。オノマトペをつけるなら『ニヤニヤ』だった、間違いなく。そこで追求を止めておけばいいのに更に俺は食い下がってしまった。『なんなんだ』と。だから彼は自然な会話の流れでこう言うしかなかったのだ。『君とスティーブの二次創作小説があったぞ』と。
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