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星条旗のショアライン

第8章 クリント・バートン(MCU/人工知能)



(6)

「本気か?」
「それは犯罪では……」
クリントと顔を見合わせた後に思わず渋い顔で聞き返すと、ヴィジョンは「覗き行為より安全です」と何食わぬ顔で言い放った。確かに二人へ公然化するリスクは一気に減る。世界一頭の切れるエンジニアが組み込んだ筈の『ファイアウォール』という外部からの侵入を一切排除するシステムも、彼を知り尽くすヴィジョンならば突破出来るかもしれない。しかし「スティーブの端末をこっそり覗き見る」事すら躊躇っていたというのに突飛な提案には頭痛さえした。
ただトニーとスティーブが何をきっかけに仲良く話していたのか気になったという話が、ここまで大事になるなんて思わなかった。自分の浅はかな思考にはうんざりする。
一方で、裏を返せば早い段階でヴィジョンに相談して良かった事もある。自分がしようとしていた行いは一歩間違えれば彼らの信用を失いかねない重大な過ちに繋がっていた。それに気付けた事は大いなる収穫だ。
ヴィジョンが「どうしますか」と囁き、俺の手を取って顔を覗き込んできた。彼の美しいブルーの瞳に情けない自分の表情が映り込んで、つい自嘲気味に嗤う。「やはりやめておくって言ったら怒るか?」と問えば、額のストーンを煌めかせる彼はまた人間らしく笑みを噛んでから「貴方らしい決断です」と姿勢を正した。

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