第1章 スティーブ・ロジャース(MCU/EG)
「キャップの……ロケット?」
――隙があれば眺めて、難しい顔で溜め息をついていた写真の相手は一体誰だろうと思っていた。俺と同じく一時期ヴィラン化していたキャップの親友であるウィンター・ソルジャーことバッキーか、七十年以上前に出会った麗しいエージェントであるカーターか。でもどちらも違った。今、手の中であらぬ方を向いて微笑んでいる存在は……俺だった。
「…………」
ロケットの蓋をそっと親指で閉める。見なかった事にしよう、堅い決意の元で隠すように握り込んだけど一足遅く、過去のキャップに仕草を見られてしまう。
彼も地に伏していたのに長い腕のリーチを活かして俺の手首を掴み、あまつさえその体勢で僅かに俺を引き寄せた。ぎょっとして固まっていると、彼は掌をこじ開けて指を突っ込み、あっという間にロケットを奪う。この間、十秒足らず。指の先まで超人とは恐れ入る。
「なぜお前がこれを!」
改めてロケットを開き、中を見ながら現代のキャップに詰め寄る過去のキャップは怒り半分、困惑半分と言った具合だ。それに関しては俺も同意だった、なぜキャプテンが俺の写真を。
詰め寄られたキャップは無防備な体勢から復帰してすぐさま表情を曇らせた。掴みかかってきた自分自身に背後から首を絞められ、そのままスープレックスされるまで早かったが「レインは……ッ、ぼくのこいびとだ……っ」「なに……!?」というやり取りを意識が落とされようとするまで交わしていたので、実は余裕があるのかもしれない。
それよりも聞いている俺の方が余裕をなくしてしまい、慌てて二人に飛び掛かって格闘の仲裁に入る。過去のキャップは俺を見留めると、マスク越しでも分かるくらい喜色のために頬を緩ませた。
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