第1章 スティーブ・ロジャース(MCU/EG)
(2)
硝子が砕けて大穴の空いたスペースからマントを翻して飛び降りる。俺は体の組織にウルとヴィブラニウムを注ぎ込んだスーパーソルジャーだからちょっとやそっとじゃ傷つかない。
一時期ヴィラン化していたのを幼馴染のキャプテン・アメリカもといスティーブ・ロジャースに救われてからは専ら彼のサイドキックになっていたけれど、相棒としていくつもの戦いに身を投じてきた中でも今回ほど奇妙なこともないだろう。
――二人のキャプテン・アメリカがしのぎを削る。それは異様でもあったし、かといって時を渡って時代に介入しているのは我々の方だから、排除されるべき存在がどちらであるかは火を見るより明らかだ。でも、本来であれば交わる必要はない。どうにか場を丸く収める方法はないだろうか。
「うっ……!」
などという考え事をするのは平地に限る。着地も束の間、何かに足を取られて盛大に転ぶ。アタッシュケースが無機質な床を回転しながら滑って手元から離れるのを追い掛けたいけれど、踏み付けた物がそれを阻止するかのように笑えてしまうくらい綺麗に掌へ滑り込んできた。反射的にハシッと握り締めて咄嗟に見る。
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