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星条旗のショアライン

第3章 マイティ・ソー(MCU/DW)



「……ッ」
雨粒が当たるような軽い感覚が背中を擽る。結晶体はいまだヴィブラニウム合金を貫くに値しない存在だったらしい。それなら俺でも盾として力になれそうだと密かに胸を撫で下ろしながら足元の男に声を掛けると、痛みに耐えながら上体を起こしたソーは俺を見留めた瞬間に見事な二度見をした。
「フリーマン……!」
「元気そうだな、アスガルドの」
「ああ……いや、そうでもない。頼む、力を貸してくれ」
潔く助力を求むソーから切迫した雰囲気を感じ取る。あれから随分と肩の力が抜けて垢抜けたようだが、彼が王になる為の資格を得ようとも宇宙の猛威はそれらを上回るというのだろうか。だとしたら頼むからもう外部での争い事を地球に持ち込まないでくれ、瀬戸際で抑え込むのも限界なんだ。
「フリーマン!」
「!」
立ち上がるソーに手を貸した矢先に彼から名を叫ばれて首だけで振り返れば、暴虐に水を差された人型の生物が咆哮して怒り狂っており、つるぎの形を模した結晶体を振りかざしながら迫って来ていた。確かに邪魔をしたが……そんなに邪険に扱わなくて良いじゃないか。宜しくやろう、君があるべき所に還るまで。
ソーが腕を引いて庇おうとしてくれているが、俺が頑として動かないのでこちらもこちらで吼えている。前門の雷神、後門の敵はとにかく頭に血が昇って冷静ではない。少なくとも王子の闘争心を折る気は無いので、敵を黙らせる事が先決だろう。
結晶体のつるぎが真っ直ぐに俺の肩甲骨の間に吸い込まれていく。成程、君たち宇宙人も弱点は人中か……そんなことを頭の端に置きながら、つるぎの切っ先から柄まで順当に砕け散る音を確かに聞き拾った。やはり俺の身体は結晶体を打ち砕く。それしきの力のみでは俺に……――。
「――勝てないぞっ!」
腰を捻りながら上体を翻し、敵の腹に向かって拳をかち上げる。頬の横を疾風が過ぎるのを感じながら合金と筋肉の混じり合った塊を一気に振り抜いた。大きく弓なりになった白黒のシルエットは呻き声を発しながら遥か先まで吹き飛んでいく。空を飛ぶソーもかくやな速さだ。少しキャプテンの盾を投げる姿勢を真似したのだが、上手くいったらしい。

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