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星条旗のショアライン

第20章 ルーカス・リー(SPvsW/第二話)



「リトルキャットッ!」
「あ"っ」
何だかまんまと術中に嵌った気がしなくもない。スコットはラモーナと付き合う為にルーカスが邪魔だった訳だし、俺に擦り付ける結果になればそれはそれで構わなかったのだろう。その証拠とばかりに、めいっぱい俺を抱き締めるルーカスの背中を見て小さくガッツポーズをしていたスコットの姿を俺は見逃さなかった。
次の瞬間にはルーカスの足元に大量のコインがジャラジャラとばらまかれ、頭上に二千の経験値を報せる数字がピコーンと現れてしまい、晴れて彼をノックアウトしたとして事態が収束してしまったのだった。ああ、神様のバカ。

(4)

「ってわけだからウォレス一緒に行こ?」
「やだ」
「どうして!」
「『今カレ』が居るだろ。そっちと行けば」
「や……やだやだぁっ! ウォレスがいいのっ!」
「可愛く駄々こねられても行かないよ」
「ん"い"っ」
部屋着姿に寝癖をつけたウォレスの手を握って家の外へと引っ張るけど、扉に身体を預ける彼は全くその場から動こうとしなかった。眠たげな瞳で俺を静かに見据えながら確かに怒りを蓄えている様子には気付いていたけれど、ルーカス・リーを誘うとか二人きりで出掛けるとかマジでないから。
「ルーカス・リーの連絡先なんか知らないし!」
「……スマホ見てみなよ、登録されてるから」
「えっ!?」
溜め息混じりのウォレスの言葉に慌ててスマホを弄ると、確かにアドレスのLの欄にルーカス・リーの名前がある。戦慄く俺にウォレスは続けて「君を抱き締めてる時に尻から抜き取って打ち込んでたよ」ととんでもない事実を暴露したあと、我慢ならないといったような大欠伸をしながら、いよいよ部屋の中へと引っ込んでしまった。バタンと目の前で勢い良く閉まる扉がまるで俺を拒否しているようで胸の奥がギリギリと痛む。
(ど、どうして……)
あの日からウォレスはずっと今みたいな調子だ。連絡しても無視されて家に押し掛けても袖にされる。顔を合わせると決まって怒ったような表情で睨まれて、以前のように話すらしてくれない。俺がルーカス・リーと親しくなったからだろうか。彼に限ってそんな嫉妬の仕方をするなんて。でも本当にそうだとしたら……そんなの、俺にはどうすることも出来ないじゃんか。俺はどうすれば良かったんだ。このまますれ違って絶交とか絶対に嫌なのに。

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