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星条旗のショアライン

第19章 ルーカス・リー(SPvsW/第一話)



ウォレスの言葉に慌てて振り返って息を飲む。本当だ誰だこいつ。ルーカスと同じ服装に身を包んだ同じような体格の赤の他人が俺を全力で抱き締めている。いや待てよ、これは抱擁じゃない。羽交い締めだ。いつの間にスコットと入れ替わったんだろう、じゃあスコットは何処へ行ったんだろう。
「ひっ、ばかっ、どこ触ってんだ変態っ!」
コートの中に入り込んで胸元を這い回る逞しい腕を引き剥がそうと暴れながらも視線を巡らせると、ずーっと向こうの幕の前で複数人のスタントマンと互角の格闘を披露するスコットの姿があった。
あれぇ。強いなぁスコット。俺が庇う必要は全然なかったみたいだ。だからウォレスも手を出さなかったのか、なら初めからそう説明してくれたら良かったのに。そうしたら無意味な痴漢行為はこの場から撲滅されていたのに。
「ねぇなんでこいつ俺の胸ばっかり触るの!?」
「ゲイだからだ」
俺とスコットを引き離す為に拘束しているという現状には甘んじるけど私情を挟んで欲望に忠実なのは止めて欲しい。それにゲイだからって一括りにするのは偏見だぞ、現にウォレスは俺の身体に性的な意味合いを持って触ったことなんかない。別格の睨みを利かせながらスタントマンの性質を告げてきたルーカスは、暴れ疲れて息も絶え絶えな俺との距離を一気に詰めて、あろう事か顎を掬い上げてきた。
「んぐっ」
「……」
無理な体勢で喉を晒すのは普通に苦しい。スタントマンの張り出した股間の熱がコート越しの尻にごりごりと押し付けられているのも苦しい。ウォレス、流石にカフェオレ啜ってないで助けてくれ。友人が穢されていいのか。
「ん"っ」
「お前、香水くせぇな」
「……?」
ルーカスがおもむろにコートの襟元へ鼻先を突っ込んで何かを確かめる様に鼻を鳴らす。鼻垂れが鼻を利かせて何が分かるんだ。お生憎だけど俺は香水なんか付けていない。柔軟剤の匂いならするかもしれないけど。見当違いも大概にしてくれ。
「ゲイが『お相手探し』で振る香水の匂いじゃねぇか」
「……っ!?」

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