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星条旗のショアライン

第19章 ルーカス・リー(SPvsW/第一話)



(4)

それから一時間経ってもルーカス・リーがトレーラーから姿を見せず、もう帰ってしまおうかなぁと土塊を蹴り飛ばしていた時にスコットとその彼女であるラモーナが合流した。偶然だねと声を掛けると「ウォレスに誘われたから来たんだ」とスコットは何故か気まずそうに俯いた。いつ彼に連絡を取っていたっけ、と疑問に思いつつも冷え切ったコーヒーの最後のひとくちを呷る。
そんななか俺達を静かに見守っていたラモーナが真っ青な髪を風に靡かせながら微笑んできた。冷たそうな美人って印象だったけど思っていたよりも普通の子なのかも。影のある雰囲気をまといながらもスコットといると何処と無く安堵しているように見えるのは、俺が程よい第三者で客観的に観察出来ているからかな。試しに微笑み返すと彼女は今度こそくすりと擽ったそうに笑った。おお。スコットは大変可愛らしい恋人を見つけたもんだ。髪色こそ奇抜だけど愛嬌のある子だったみたい。
「来るぞ」
「!」
眠そうな声が本題を告げる。いよいよルーカス・リーがご登場だ。音楽が辺りに響き、そのベース音に合わせてトレーラーの扉が開いたかと思うと男が肩で風を切りながら悠々と現れた。
(おおっ?!)
驚いた。予想以上に癖の強い見た目をしている。短く刈り込まれた頭髪、ショートボックスと無精髭が混ざったような独特のスタイルを持った髭、凛々しいの更に上の表現があればそれしかないと思うくらいの鋭角な眉毛。顔は文句なしにハンサム中のハンサムだ。そこに付属するものの個性が強いだけで。
色めくギャラリーに目も配れず自らカチンコの啖呵を切って演技を始めたルーカスだったが、やはり演技も……というか喋り方も癖が強い。訛りというよりもあくまで強弱の問題だろうが、あんなに破裂音に力を込めなくても良いのに。所謂『ノーティ・ワン』な人間になればなるほど一部の破裂音が鈍った音になりがちだけど、そこへ限りなく寄せた発音だ。日本人の俺にはかなり聞き取りづらい。ウォレスがどれだけ気を使って俺にゆっくりと分かりやすく話してくれていたのかと感動するくらいだ。

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