第2章 夏菫《幸村精市 R18》
ペロリ ペロリ
重力に従い滑り落ちそうになる雫をせっせと舌で舐めとる。
ひんやりとした冷気とフルーツの人工的な甘味が舌の上で混ざり合い、嚥下するほどに多幸感が生まれる。
ジワジワとセミの合唱にもボリュームが出始めてきた外では、今日も最高気温を競うかのように太陽がさんさんと輝いている。
「さんはアイスを食べてるだけでもなんだかいやらしいね、視覚的に」
「精市くんは相変わらず、その綺麗な顔と台詞が一致しないね」
呆れたような視線で、彼――幸村精市を見やる。
いつの間にやら懐かれて、あれよあれよと彼氏の立場を確立してしまった彼はまだ高校生で、対する私は立派な社会人2年生だ。
一人暮らしのマンションにふらっと遊びに来てはふらっと帰っていくので、時折妄想の産物なのではと自分で自分が心配になる。
そんな彼が休みの日に差し入れのアイスを持って陽炎のようにふらりと現れたので、エアコンの効いた室内へと招いた次第である。
「夏休みか、羨ましいなぁ」
「さんお休みは?」
「お盆の前後に雀の涙程度、ボーナス使ってぱぁっと旅行とか行きたいけど、どこも混んでるしなぁ」
ようやく最後の一口を食べ終えて、アイスの棒をゴミ箱へ捨てにキッチンへ立つと、精市くんはこの時を待ってましたとばかりに私を後ろから抱きすくめて嬉しそう。
「それじゃ、今度は俺がさんをいただきますね」
アイスを食べなかったのはそれが言いたかったからなのか…。小さくため息をつきつつも、毎度付き合ってしまう自分も大概である。
「て、ちょ…っ、ここで?」
「たまには気分を変えてみようかと」
そう広くないキッチンはシンクに申し訳程度の調理スペースと二口のコンロがあるだけの簡素なモノだが、タイミングが良いのか悪いのか、昨日掃除をしたばかりでピカピカだ。
項の辺りに顔を埋めて甘えてくる精市くんの髪がくすぐったくて身動ぎしていると、するりと細くて長い指が花柄のブラウスの中に入り込み、肌の感触を楽しんだ。
「ん、ん…っ」
指でなぞられた部分が次第に熱を帯びる様に感度が高まっていく。高校生相手に恥ずかしいという気持ちも、関係を重ねる内に薄らいでいった。彼の愛撫が声が体温が、あらゆる感情をかなぐり捨ててでも欲しくなってしまう。