第1章 ヘリオトロープ 《切原赤也 R18》
「赤也は純粋だから、気をつけてね」
それだけ言うと幸村は教室を後にした。
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スッキリした顔の赤也が戻ってきたのはそれから暫くしてだった。
「赤也くん、そろそろ練習に戻りましょう、抜け出した事がバレちゃいます」
「え、でも、大丈夫なのか?」
「わ、私なら大丈夫です」
先程の出来事を思い出して、二人して思わず赤面する。
「ごめん、俺なんか暴走しちまって…」
「へ、平気です、大丈夫です、心配しないでください、ささ、行きましょう」
乱れた髪をぱぱっと直し、はいつもの笑顔を赤也へ向けた。
幸村に会ったことは赤也には言い出せなかった。
なんとなく、言ってはいけないような気がしたからだ。
赤也に秘密ができてしまった事に一抹の不安を感じつつ、は赤也に続いて教室を出た。