第11章 板挟み
いつの間にか眠っていたのだろう。わたしはパチリと目を覚ました。視線を動かすと、中也さんがベッドの端に腰掛けているのが見えた。
「中也さん……?」
「よう、起きたか。具合はどうだ?」
「具合……?」
「怪我だよ。姐さんと訓練したんだってな。聞いた」
中也さんは立ち上がり、テーブルに置いてあった大きめの瓶を軽く振って見せた。
「これ何だか分かるか?」
「……? 何です、それ」
むくりと起き上がりながら尋ねる。色の濃い瓶に何か液体が入っているように見えるが、わたしにはそれが何か検討もつかなかった。
「これはな、『ワイン』と言う飲み物なんだ」
「お酒ですか?」
「おう。……手前未成年だったか?」
「失礼な。立派に成人してます二十歳です!」
ムキになってそう云うと、中也さんは「悪かったって」とニヤついていた。全然反省してないなこの人。
「でも手前、結構童顔だよなァ」
「悪かったですね。どーせ童顔で子ども体温ですよーっだ」
「何だ、手前体温高いのか」
「前に云われた事があるんです。わたしの体温が高いって。子どもみたいだって」
「へぇ。髪切った所為か余計に子どもっぽさ出たよな」
「お店でお酒飲もうとしたら断られましたからね。成人なのに」
「そりゃあ難儀なこって」
云いつつ中也さんはとくとくとく、とワイングラスにワインを注いだ。ほらよ、と差し出されるそれは赤紫色で香りも良かった。
そういえば、ワインは葡萄を使って作られたお酒だとか。わたしはお酒が強くないしあまり飲まないけれど、酒は薬になる時もある為、知識として知っていた。
「中也さんの分、わたしが注ぎますよ」
「お、悪ィな。頼むわ」
瓶を預かり、わたしはワイングラスから瓶の口を少し離してからとくとくとく、とワインを注いだ。
中也さんのグラスも赤紫に満ち、わたし達はお互いのグラスをかちんと当てた。
「乾杯」